(※写真はイメージです/PIXTA)

新型コロナウイルスの感染拡大により、ネットショッピングの需要が急激に高まっています。一方、物流件数の増加・複雑化に伴う人材不足と運賃上昇が課題となっており、この課題解決のために現在注目されているのが、デジタル技術を活用してビジネスモデル変革を行う「DX(デジタルトランスフォーメーション)」です。今回は、日本企業にとって「物流DX化」が急務である理由を見ていきましょう。

自社の未来を長期的に見据えた「攻めのIT投資」が重要

筆者の会社は企業の物流デジタル化の支援をしていますが、1年ほど前から筆者のもとに寄せられる問い合わせや相談の内容も大きく変わってきました。これまでは「誤出荷を減らしたい」「ピッキングを効率化したい」「在庫を適正化したい」といった具体的かつ、短期的な課題解決のためにシステム導入を検討される企業がほとんどでした。

 

しかし、ここ最近は「新しい事業を展開するうえで物流システムをどう構築するか」「デジタル化を進めたいがどうすればいいか」「DX推進プロジェクトを立ち上げたいので協力してほしい」といった中長期的な視点での相談が増えてきました。

 

従来のIT化とは一線を画す物流DXを目の前にして、おそらく誰もがどのように実践していけばよいのか、迷っているのではないかと思います。

 

物流DXを推進するには、デジタル技術の活用など「攻めのIT投資」が必要です。しかし、実態はその逆になっています。JUAS(一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会)の「企業IT動向調査2017」によると、日本企業のIT関連予算の80%は現行ビジネスの維持や運営などの「守りのIT投資」に割り当てられています。

 

小さい会社ながら筆者も経営者という立場ですから、企業が大きな投資を行う際には、費用対効果が重要であることは理解できます。とはいえ、ある程度の導入効果が見えているシステム投資は従来のIT化と変わらないのではないでしょうか。

 

しかし、物流DXを真に成功させるには、短期的な効果で判断するのでなく、自社の未来を10年先、20年先まで見据えた長期的な視点で積極的に投資し、開発を進めることが重要なのです。

「コスト削減・人手不足」の解消を狙い、進む物流DX

国内企業でいち早く物流DXの必要性に気づいたのはユニクロを運営するファーストリテイリングです。ユニクロはファストファッションを扱うアパレル業あるいは小売り業として知られていますが、製品開発から製造まで自社で行っていますから、製造業の側面ももっています。

 

同社が取り組んだのが倉庫の完全自動化です。これまでの倉庫のオペレーションはどうしても人海戦術に頼らないといけない部分があり、人手不足のなか、人件費が高騰していました。そこで倉庫を完全自動化することでコスト削減と人手不足の解消を狙ったのです。

 

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※本連載は、東 聖也氏の著書『WMS(倉庫管理システム)で実現する中小製造業の物流DX』(幻冬舎)より一部を抜粋・再編集したものです。

WMS(倉庫管理システム)で実現する中小製造業の物流DX

WMS(倉庫管理システム)で実現する中小製造業の物流DX

東 聖也

幻冬舎

多くの中小製造業では、倉庫管理や製品を配送する物流工程に課題を残している可能性があります。例えば、多くの倉庫ではいまだ手書きで帳簿をつけたり、エクセルなどで手動で製品の管理を行っています。また、「手配する」「梱…

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