4―ワクチン接種を後押しする手立てはあるか
1.効果や安全性の説明、および身近な人や医療従事者の推奨、クーポンやポイントは後押しになる可能性
すぐには接種を希望しない人に対して、いくつかの取り組みを示し、ワクチン接種に前向きになると思う取り組みを選んでもらった[図表4]。その結果、最多は「長期的な安全性が確認できること」で48.4%、次いで「副反応についての情報が十分集まること」(44.0%)、「効果がはっきりすること」(39.9%)、「副反応が抑えられたワクチンが開発されること」(27.6%)の順に選択割合が高かった。
すぐには接種を希望しない理由別にみると、安全性への不安がある人とワクチンの種類を選びたい人では、当然のことながら、ワクチンの安全性、副反応に対する不安を軽減する情報等をあげていた。順番待ち・様子見をしている人では、安全性や副反応に対する不安の軽減以外に、身近な人の接種が進むことや身近な人の推奨、医療従事者等の推奨、クーポンやポイントなどの特典が得られることをあげていた。面倒だと感じている人では、クーポンやポイント等の特典、身近な人や医療従事者による推奨を回答していた。
2.「ワクチンパスポート」も活用時期や場面によっては、“順番待ち・様子見”“面倒”を理由とする人の後押しになる可能性
次に、政府が導入に向けて調整を進めている、新型コロナウイルスのワクチン接種の証明である「ワクチンパスポート」について、海外渡航者の出入国時の必要への対応以外に、ワクチン接種記録の提示によって会場やイベントへの入場時の要件が緩和されたり、さまざまなサービスやキャンペーンが受けられたりするなどの国内における活用についても検討されていることを注記したうえで、考え方を尋ねた。
その結果、すぐには接種を希望しない人では「二回目まで接種を完了している」「一回目の接種は終えている」「一回面の接種予約は官僚し、接種日を待っている」「まだ予約していないが、すぐにでも接種したい」を合わせた「既に接種~すぐにでも接種したい」人と比べて否定的だった[図表5]。
しかし、37.7%が「国内でも積極的に活用していくとよい」または「国内でも利用していくとよいが、活用対象については慎重に検討した方がよい」と賛同しており、「あまり国内利用には賛成できない」「国内利用は認めるべきではない」をあわせた28.0%を上回った。
すぐには接種を希望しない理由別にみると、“順番待ち・様子見”と“ワクチンの種類を選びたい”人は、ワクチンパスポートの導入にも賛同する割合がすぐには接種を希望しない人全体と比べると高かった。
具体的な活用場面ごとに、ワクチンパスポートの利用意向を分析した。
活用場面としては、7つの場面1を提示し、「ワクチンを接種して、ぜひ利用したい」「ワクチンを接種して、機会があれば利用したい」を『利用意向有』、「ワクチンを接種しても、あまり利用したくない」「ワクチンを接種しても、利用したくない」「こうした利用方法は認めるべきでない」を『利用意向なし・反対』として、『利用意向有』が多かった3つの活用場面「飲食代金や利用料の割引、ポイントの割増が受けられる」「介護施設や医療機関での面会制限が緩和され、直接会えるようになる」「緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の対象地域との移動制限や隔離(待機)措置が緩和される」について示す。
1「飲食代金や利用料の割引、ポイントの割増が受けられる」「保有者限定のキャンペーンに参加できる」「緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の対象地域との移動制限や隔離(待機)措置が緩和される」「緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の期間中・対象地域でも国内旅行などのツアーに参加できるようになる」「会場や施設等の入場者数の制限が緩和された保有者限定のイベントが開催される」「イベント会場、施設等への入場時に専用レーンが開設される」「介護施設や医療機関での面会制限が緩和され、直接会えるようになる」について尋ねた。
もっとも利用意向が高かったのは、「既に接種~すぐにでも接種したい」においても「すぐには接種を希望しない」においても「飲食代金や利用料の割引、ポイントの割増が受けられる」で、次いで「介護施設や医療機関での面会制限が緩和され、直接会えるようになる」だった。
すぐには接種を希望しない人では、「既に接種~すぐにでも接種したい」人と比べて、すべての活用場面で利用意向は低かった。
「ワクチンパスポート」が導入された場合、ワクチンを打っていない人にとっては不利益となる可能性があるため賛同できない可能性と、すぐには接種を希望していない人ほどワクチンの効果について懐疑的な傾向があるため、人流を促すような政策に賛同できない可能性が考えられる。
すぐには接種を希望しない人の中では、ワクチンへの考え方[図表5]と同様に、具体的な活用場面でみても、“順番待ち・様子見”“ワクチンを選びたい”を理由とする人で、相対的に『利用意向有』が高かった[図表6]。この2つの理由をあげる人は、いずれ接種することが視野に入っている可能性がある。