紙カルテとシールの活用で「ワクチン接種ミス」を阻止
それでは私の院の「紙カルテ+シールによるコミュニケーション術」について、具体的に説明していきます。
図表2は、事務スタッフの近くに用意されている「ワクチンシール」です。こちらは、事務スタッフから私と看護師に連絡をするために使っています。
事務スタッフはワクチン接種を希望する患者が来院すると、母子手帳を確認し、その子どもに接種しても大丈夫か確認します。そして接種可能な場合は、カルテにワクチンシールを貼って診療室に持参するのです。
看護師はシールを確認すると、接種スケジュールに問題がないことを確認後、シリンジにワクチンを充填。私自身も最終確認を行い、看護師から注射器を受け取って接種をします。
こうすることで、口頭やメモを使って連絡するよりもはるかに短時間で、ミスなくワクチンの接種を完了できます。ワクチンは健康な人に接種するので、絶対に間違いが許されません。
4種混合ワクチンの予防接種を希望した患者に誤ってヒブワクチンを打ってしまったら、言い訳はいっさいきかないのです。そこで、事務スタッフ、看護師、私でトリプルチェックを行い、万全を期しています。私の院では、ヒブワクチンと肺炎球菌ワクチンの同時接種(ヒブプレ)、4種混合ワクチン、麻疹・風疹混合ワクチン(MR)、日本脳炎ワクチンの希望者が多いため、これらのシールを多めに用意しています。
内科の場合は、風疹ワクチンや大人用の肺炎球菌ワクチン(ニューモバックス)などのシールをたくさんつくっておくと、業務効率を高められます。
ワクチン以外では、「母子手帳忘れ」のシール(図表2の写真内右下)も用意しています。母子手帳を忘れた患者が来院した場合、看護師は、接種日やワクチンのロットナンバーが記されたシールを作成し、あとで母子手帳に貼ってもらえるようにします。この作業を忘れないようにするため、シールを用意しているのです。
医師から看護師、事務スタッフへの伝達もシールで完結
図表3は、診察室の近くにあるボードです。ここに用意されているシールは、私から看護師に連絡するために使います。看護師への依頼内容は多岐にわたるため、ほとんどのシールはボードに1枚だけしか貼っていません。
ただし、同じシールは何枚も事前に用意しており、私があるシールをカルテに貼ったら、同じ種類のシールを看護師がボードに補充する仕組みになっています。
シールのなかには、「溶連菌」や「マイコプラズマ」などの病名も含まれています。これは私の院で迅速検査が可能な感染症で、私がこれらのシールをカルテに貼った瞬間に、看護師は検査の準備を行います。
図表4は、ある患者に関する指示を8枚のシールでまとめた事例です。これらのシールは私が紙カルテに貼り、看護師に渡します。
そして看護師は「検尿と尿培のシールが貼られているから、この患者の検体は捨てず、きちんと培養に出さなければダメだな」などと確認して作業を行います。
その後、カルテはシールが貼られたまま事務部門に届けられます。
そして事務スタッフは、「後診療なしのシールが貼られているから、会計が終わったら患者を帰宅させていいのだな」「スパイロのシールが貼られているから、『スパイログラフィー等検査』の保険点数を取らなければいけないな」などと確認する流れです。
図表5は、私の診察デスク上にあるモニターで、ここに貼られているシールは、私から事務スタッフへの連絡用です。「抗菌」とは小児抗菌薬適正使用支援加算を忘れずに取るよう伝えるもの、「(か)」とは小児かかりつけ診療料算定のための、かかりつけ同意書にサインしてくれる可能性が高い患者だということを伝えるものです。
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