前回は、銀行の評価が上がる損益計算書(PL)の作成方法を説明しました。今回は、同じ観点で貸借対照表(BS)の作成方法を見ていきましょう。

不明朗な項目をなくし、同業他社との比較を意識する

BS(貸借対照表)では、銀行が行う格付け評価のアップを目指す。財務スコアリングモデルで数値が高くなるように意識するのだ。

 

まず、不明朗な項目をなくし、同業他社との比較を意識することがポイントだ。

 

例えば、「社長貸付金」は中小企業の決算書でよく見かけるが、間違いなくマイナスの評価となる。会社の資金を私的に流用していると疑われるおそれがあり、期末には残らないようにすべきだ。

 

「仮払金」はよく見かける科目だが、費用を未処理にしているだけではないかと疑われる。あまり多用してはならない。「創立費・開業費」は資産とはみなされないので、計画的に償却していく。残高をいつまでも放置しておいてはいけない。

融資額の判断のベースとなる「運転資金の額」も重要

逆に、財務スコアリングモデルで数値が高くなるのは、次のようなケースだ。

 

「社長借入金」は社長からの出資とみなされ、銀行の評価は肯定的だ。長期借入金に含めるのではなく、個別に表示したほうがよい。社長借入金が多い場合、繰越欠損金の範囲内で債務免除をすれば非課税で自己資本を大きくすることができ、安全性の指標が改善する。

 

また、社長が会社への債権を現物出資することによって、借入金を資本金へ振り替えることができる(デットエクイティスワップ)。これにより、自己資本比率が上がり、安全性の指標が改善する。ただし、債務超過状態であったりすると、債務免除益を認定されることがあるので注意が必要だ。

 

「長期借入金」は、借入金の中で返済期限が決算日以後1年超のものだ。安全性の指標が改善するので必ず長期借入金として計上する。

 

財務スコアリングモデルで意外に重要なのが、運転資金の額だ。運転資金とは、企業経営にあたって必要な資金で、融資額の判断のベースとなる。

 

基本的に次のように計算する。

 

経常運転資金(正味営業運転資金)=売上債権(売掛金+受取手形)+棚卸資産

−買入債務(買掛金+支払手形)

 

「未収入金」が継続反復して発生するようなら、「売掛金」として処理する。運転資金がその分、大きくなる。

 

「買掛金」と「未払金」の区分は明確にする。「買掛金」とは原価に関しての債務であって、それ以外は「未払金」に区分するのだ。買掛金が小さくなれば、その分だけ運転資金が増加する。

 

また、債務の償還年数を計算するときは、短期・長期の借入金から運転資金を控除するので、運転資金が大きくなれば債務償還年数が短くなり、格付けが改善する。

本連載は、2016年3月2日刊行の書籍『赤字会社を完全復活させる 逆転の融資交渉術』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

赤字会社を完全復活させる 逆転の融資交渉術

赤字会社を完全復活させる 逆転の融資交渉術

久松 潤一

幻冬舎メディアコンサルティング

苦しい経営を続ける中小企業も依然として多い中、企業にトドメを刺すのは資金供給のストップ、すなわち銀行の融資がおりなくなることです。バブル期のように、銀行が「借りてください」と頭を下げるような状況が再び訪れること…

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