銀行の格付けを下げてしまう会計処理とは?
決算書についての基礎知識を踏まえて、銀行融資を受けやすい決算書を作らなければならない。
ところが、決算書が読める中小企業経営者にも落とし穴がある。税金対策ばかりに目が向いて、銀行の格付けを下げてしまうような会計処理をしてしまうのだ。
事業が好調なうちは経費(損金)を増やして税金(法人税)を抑えるのもいいが、事業には必ず波がある。節税ばかり考えた会計処理をしていると、いざ銀行に融資を申し込まなければならなくなったときに困ってしまう。
税理士が作成する決算書も、通常は税金対策を意識して利益を圧縮することが多い。しかし、それでは銀行の評価を下げてしまう。むしろ、安定的な成長を目指すなら、利益をきちんと計上する会計処理を行い、銀行が評価する決算書にしておくべきだ。
具体的な評価アップのポイントを損益計算書(PL)と貸借対照表(BS)に分けて、いくつか挙げておこう。
PLでは「営業利益」「経常利益」を改善する
損益計算書(PL)で大事なのは、会社として本業で稼ぐ力がちゃんとあるとアピールすることだ。そのためには、営業利益、経常利益を改善することがポイントとなる。
例えば、資産の「売却収入」は、何年かにわたって継続的に発生する見込みなら、特別利益ではなく売上に計上する。不良在庫の「処分損」は売上原価に含めることが多いが、臨時的な損失として特別損失に計上する。「退職金」は零細企業ではめったに発生しない費用なので、臨時的な支出として特別損失に計上する。
設備投資をした場合には租税特別措置法により「特別償却」が認められることがある。税務会計と企業会計は基本的に別なので、特別償却分は会計処理においては損益計算書の「減価償却」ではなく、貸借対照表の「純資産の部」に「準備金」として積み立てる。その分、減価償却費が減少して、営業利益、経常利益、当期利益が大きくなる。
ただし、「減価償却」を計上しないで利益を大きく見せる手法は銀行から簡単に見抜かれる。ある程度は、規則的に償却する必要がある。
次回は貸借対照表(BS)の具体的な評価アップのポイントを説明する。