※写真はイメージです/PIXTA

事業承継では、自社株の評価額を下げることにより、株式移転コストが抑えられます。収益不動産の購入や持株会を活用した株式数の調整など、自社株の評価額を一時的に下げるための方法と注意点を詳しくみていきましょう。

従業員持株会の活用で株式数を減らす

株式の移転コストを減らすためには、ここまでに説明してきたような、「株価が下がるタイミングを見計らい、そのタイミングで株式の移転を実行する」という考え方のほかに、「移転する株式の数を減らすことで移転コスト総額を減らす」という考え方もあります。

 

以前は、後者の考え方に基づいて、後継者以外の家族や親戚などにも株式を相続や贈与するなどして後継者が承継する株式を減らすことが、事業承継対策としてよく行われていた時代がありました。

 

しかし、先にもご説明したとおり、株式は財産権だけではなく経営権をも表すものであり、経営権を分散させることは経営の不安定化をもたらします。

 

そこで、現在はなるべく株式は後継者に集中させるほうがよいという考えが主流ですが、その例外となるのが従業員持株会の活用です。

 

やり方は、まず従業員持株会を結成し、オーナーが保有する株式の一部(例えば30%)を従業員持株会に譲渡します。その後で後継者へ株式を移転すれば、株価が変わらないとしても移転コストの総額は元の70%で済むことになります。

 

一方、オーナーの保有株を譲渡する際の株価は、買い手となる従業員がオーナー同族以外の少数株主であるため、配当還元方式をベースとして評価されることになります。

 

一般的に配当還元方式での株価は、他の方式での評価に比べて非常に低いものとなります。従業員が低額で自社の株式を購入できて、場合によっては株主として業績に応じた配当も受け取れるとなれば、従業員の経営参加意識が高まり、業績向上に結びつく効果もあるでしょう。

 

また、従業員持株会は、親族などを少数株主にするケースと異なり、経営不安定化の要因にならないメリットがあります。従業員持株会の株式にも株主総会での議決権が付与されていますが、従業員持株会(実際的には持株会の理事長)がオーナー経営者の意向に反する意思表明をするということは、常識的には考えられないためです。

 

従業員持株会組成に際しては、まず規約をつくります。その規約においては、従業員が退職後も株主のままでいられると困ったことになるので、退職時は譲り渡してもらう条項を必ず設けておくことがポイントです。

 

社員数が数名から十数名規模と小規模な会社では、持株会の結成は難しいかもしれません。しかし、ある程度の社員規模となった中堅企業、特に将来の株式公開を目指している会社の場合は、ぜひ活用を検討したい方法です。

 

 

税理士法人 チェスター

 

 

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