(※写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、東海東京調査センターの中村貴司シニアストラテジスト(オルタナティブ投資戦略担当)への取材レポートです。今回は、Jリート指数の見通しについて見ていきます。

コロナ感染者数急増で、商業施設とホテルは買い控えか

Jリート指数(東証REIT指数)は2021年7月13日に 2,200.02ポイントをつけたあと、利益確定の動きが強まり、上値の重い展開が継続している(8月11日時点)。

 

その要因として、①NAV(純資産価値)倍率などバリュエーション面で上値余地が低下していることや、②良好な需給要因が剥落したこと(2020年9月から全4回に渡るFTSEグローバル株式指数シリーズへの組み入れが6月で終了)に加え、③年初からのパフォーマンス比較では国内株を大きくアウトパフォームしていることなどが挙げられ、2,200ポイントに近づく場面では、引き続き利益確定売りが膨らみやすいとみている。

 

そのため、ポートフォリオ戦略では、利回り重視のコア部分(7~8割)は長期の保有を継続。一方、キャピタルゲイン中心のサテライト部分(2~3割)は短中期の視点から商業施設やホテルリート(総合、複合型含む)の押し目買いを行う一方、オフィスリートに対しては売り上がりで対応し、全体として中立に抑える方針だ。

 

五輪開催期間中に全国で新型コロナウイルスの新規感染者数が急拡大しており、目先のファンダメンタルズ面では商業施設やホテルリートの買いは入れにくいと思われる。

 

とはいえ、ワクチン接種が進展するなかでは、先行きの国内経済の正常化という大きな流れに変化はないとみられ、調整場面での押し目買いを継続したい。

Jリートの投資主体別売買動向…「海外投資家」に注目

ここでは、2021年1~6月のJリートの需給動向について6月を中心に振り返りたい。6月のJリートの投資主体別売買動向は、委託売買代金の6~7割程度を占める海外投資家は598億円買い越し、5ヵ月連続の買い越しとなった(図表1)。

 

【図表1】Jリートの投資主体別売買動向(2019年1月~2021年6月)

 

イールドスプレッド(予想分配金利回り-10年国債利回り)など、グローバルで見たJリートの割安感に加え、6月にFTSEグローバル株式指数シリーズへもう一段組み入れられたことも海外投資家の買い越し額を増加させたと考えられる。しかし、Jリート特有の良好な需給要因はここからは剥落すると考えられ、買い入れのペースは鈍化する可能性がある点には留意したい。

 

一方、法人は5ヵ月連続の売り越しとなり、6月は387億円の売り越しとなった(図表2)。

 

東証が発表している売買データは流通市場の売買のみを集計しており、公募増資に応じた投資家の買いは含まれていない。<br/>※GPIFや日銀の売買動向に関して、運用は信託銀行経由という形になっており、法人内訳では「金融機関」、金融機関内訳では「銀行」の部門に計上されている。<br/>(出所:東証データを基に東海東京調査センター作成)
【図表2】投資主体別売買動向の内訳データ(2021年1~6月) 東証が発表している売買データは流通市場の売買のみを集計しており、公募増資に応じた投資家の買いは含まれていない。
参考までに、GPIFや日銀の売買動向に関して、運用は信託銀行経由という形になっており、法人内訳では「金融機関」、金融機関内訳では「銀行」の部門に計上されている。
(出所:東証データを基に東海東京調査センター作成)


内訳を見ると、引き続き投資信託の売り越し幅が大きい。個人投資家の保有割合が多い投資信託はJリート市場の値上がりを受け、利益確定売りが継続していると考えられる。

 

一方、日銀による買付は4月以降3ヵ月連続買付がゼロとなっている(7月分も買付がゼロで、8月以降、8月5日時点でも買付がゼロとなっている)。

 

なお、今後の投資アイデアを構築するにあたっては、海外投資家の売買動向に目を配っておきたい。ちなみに、東証のデータは毎月第8営業日の午後3時に発表されるため、継続的にフォローすることも重要だろう。

 

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このレポートは、投資判断の参考となる情報の提供を目的としたもので、投資勧誘を目的としたものではありません。投資判断の最終決定は、お客様自身の判断でなさるようお願いいたします。このレポートは、信頼できると考えられる情報に基づいて作成されていますが、東海東京調査センターおよび東海東京証券は、その正確性及び完全性に関して責任を負うものではありません。なお、このレポートに記載された意見は、作成日における判断です。

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