(※写真はイメージです/PIXTA)

ポートフォリオに占める各資産のリスクの割合を、概ね均等になるように調整する投資戦略である「リスクパリティ戦略」。この戦略を実行するヘッジファンドが増えているといいます。今回は、それによって引き起こされる「テールリスク」について考えていきます。※本連載は、東海東京調査センターの中村貴司シニアストラテジスト(オルタナティブ投資戦略担当)への取材レポートです。

「ポートフォリオ」の3つの構築スタイル

まず最初に、アカデミックな理論をベースにポートフォリオの構築スタイルを3つに分けて説明する。

 

◆ 現代ポートフォリオ理論(Modern Portfolio Theory)

1952年に米国のハリー・マーコウィッツにより発表された理論で、ポートフォリオのリスクとリターンの関係を明らかにしたもの。ポートフォリオ全体の価格変動リスクは、個々の組入銘柄の価格変動リスク、組入比率、相関係数によって決まることが示された。

同理論では、銘柄の価格変動リスクは過去から将来にわたって変わらないとの前提に立っており、リスクの推定がしやすい。その一方で、期待リターンの推定は困難である上、その期待リターンの水準が資産配分の結果に与える影響が大きく、推定に用いるデータ期間や目標リターンを少し変更しただけで異なる資産配分結果となってしまう問題点がある。

 

◆ブラック・リッターマンモデル(Black–Litterman model)

1990年にゴールドマン・サックスに所属していたフィッシャー・ブラックとロバート・リッターマンによって考案され、1992年に出版された数理モデル。

期待リターンの算定時に投資家の見通し(View)を反映した上で期待リターンを補正し、最適な資産配分を求める方法。同モデルでは現在の市場における時価総額ウェイト(マーケット・ポートフォリオ)は、マーケットが想定している推定リターンとリスクを入力して最適化した結果、得られたものと仮定している。

この考えに基づき、時価総額ウェイトと推定リスクから、市場が想定している期待リターン(インプライドリターン)を逆算する手法がとられる。加えて、投資家の見通しに基づく期待リターンを用いる(ブレンドする)ことで、期待リターンの推定が困難であるという現代ポートフォリオ理論の問題点をカバーしている。

一方、時価総額加重のポートフォリオは効率的ではなく、そこから導き出されるインプライドリターンの妥当性が担保されないという問題点もある。

 

◆リスクベース・ポートフォリオ(Risk-Based Portfolio)

長期的には、リスクに対するリターンは各資産において同じであるという仮定のもと、期待リターンを活用せず資産配分を決定する方法。具体的には、「最小分散ポートフォリオ」や「リスクパリティポートフォリオ」といったものがある。期待リターンを使用しないことにより、期待リターンの推定が困難であるという現代ポートフォリオ理論の問題点をカバーしている。

一方、リスクベース・ポートフォリオの構築手法は、リスクのみで期待リターンを考慮していない点や、投資家の見通しを反映することができない点が問題点として挙げられる。

同じ戦略をとる投資家が増え、価格形成に影響を与える

ポートフォリオの構築において、上記で述べたような問題点は残るものの、良好なバックテストや実務における戦略の優位性が示されている「リスクパリティ戦略」に投資家の関心が集中し、近年では同戦略を活用するファンド残高が急拡大している。

 

そして、類似したものも含めて、リスクパリティ戦略を大なり小なり採用しているヘッジファンドや機関投資家は多く、同戦略によるマーケットインパクトは無視できないほど大きくなっていることも事実である。そのため、ここからは、「リスクパリティ戦略」がもたらす可能性のあるテールリスク※1(機械的なハーディング現象※2)について考えてみたい。

 

※1:テールリスク:極めて低い確率で株価が大幅に下落するリスクのこと

※2:ハーディング現象:多数派と同じような行動をとってしまう現象のこと

 

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次ページリスクパリティ戦略が引き起こす「テールリスク」

このレポートは、投資判断の参考となる情報の提供を目的としたもので、投資勧誘を目的としたものではありません。投資判断の最終決定は、お客様自身の判断でなさるようお願いいたします。このレポートは、信頼できると考えられる情報に基づいて作成されていますが、東海東京調査センターおよび東海東京証券は、その正確性及び完全性に関して責任を負うものではありません。なお、このレポートに記載された意見は、作成日における判断です。

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