(※写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「宅森昭吉のエコノミックレポート」の『経済指標解説』を転載したものです。

 

先行CI前月差+1.5で2ヵ月ぶりの上昇、一致CI+1.9で2ヵ月ぶりの上昇

 

一致CIを使った景気の機械的な基調判断は、「改善」で据え置きに

 

 

 

●6月分の景気動向指数・速報値では、先行CIが前月差+1.5と2ヵ月ぶりの上昇になった。速報値からデータが利用可能な9系列では、鉱工業生産財在庫率指数(逆サイクル)、新規求人数、消費者態度指数、日経商品指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの6系列が前月差プラス寄与度に、最終需要財在庫率指数(逆サイクル)、新設住宅着工床面積、マネーストックの3系列が前月差マイナス寄与度になった。

 

●6月分の一致CIは前月差+1.9と2ヵ月ぶりの上昇になった。速報値からデータが利用可能な8系列では、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、有効求人倍率、輸出数量指数の6系列が前月差プラス寄与度に、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業の2系列が前月差マイナス寄与度になった。

 

●最近の、一致CIを使った景気の基調判断をみると、19年8月分~20年7月分は「悪化」の判断だったが、景気の基調判断は8月分で19年5月分~7月分以来13ヵ月ぶりの「下げ止まり」に上方修正された。その後、20年9月分から12月分まで「下げ止まり」で同じ判断が継続した。21年1月分で一致CIを使った景気の基調判断が、事後的に判定される景気の谷が、それ以前の数ヵ月にあった可能性が高いことを示す「上方への局面変化」に上方修正され、2月分では判断が据え置かれた。3月分で景気拡張の可能性が高いことを示す「改善」に、「上方への局面変化」から上方修正され、4月分・5月分と判断据え置きになっていた。

 

●6月分は一致CIの前月差が上昇し、3ヵ月後方移動平均は前月差0.57ポイント上昇し12ヵ月連続して上昇したので、一致CIを使った景気の基調判断は「改善」継続となった。コロナ禍でも、輸出、生産の底堅さなどから景気の基調はしっかりしていることを示唆しよう。なお、景気拡張の動きが足踏み状態になっている可能性が高いことを示す「足踏み」に下方修正される条件は「3ヵ月後方移動平均(前月差)の符号がマイナスに変化し、マイナス幅(1ヵ月、2ヵ月、または3ヵ月の累計)が1標準偏差分以上かつ当月の前月差の符号がマイナス」になることである。

 

 

●6月分の先行DIは66.7%と景気判断の分岐点の50%を12ヵ月連続で上回った。速報値からデータが利用可能な9系列中、最終需要財在庫率指数(逆サイクル)、新規求人数、消費者態度指数、日経商品指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの6系列がプラス符号に、鉱工業生産財在庫率指数(逆サイクル)、新設住宅着工床面積、マネーストックの3系列がマイナス符号になった。

 

●6月分の一致DIは75.0%程度と景気判断の分岐点の50%を上回った。速報値からデータが利用可能な8系列中、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・卸売業、有効求人倍率、輸出数量指数の6系列がプラス符号に、耐久消費財出荷指数、商業販売額指数・小売業の2系列がマイナス符号になった。

 

●8月25日発表予定の6月分景気動向指数・改訂値では、先行CIに新たに実質機械受注(製造業)が加わる。機械受注の発表日は8月18日である。また在庫率関連データが8月16日発表の確報値段階でどのようにリバイスされるかが注目される。

 

●6月分景気動向指数・改訂値で労働投入量指数が加わると、一致CIは上方修正されると予測される。労働投入量指数は、雇用者数(非農林業)と総実労働時間指数(調査産業計)の2つの系列を掛け合わせて作られている。内訳をみると、雇用者数(非農林業)は労働力調査のデータで前月比+0.3%であることが判明している。総実労働時間指数(調査産業計)は毎月勤労統計のデータで前月比+2.4%であることが判明している。6月分確報値は8月24日に発表される。また、生産指数関連データが8月16日発表の確報値段階で、また商業動態統計関連データが同じく8月16日発表の確報値段階でどのようにリバイスされるかが注目される。

 

●7月分の先行CIの採用系列で速報値からデータが利用可能な9系列中、現時点で数値が判明しているのは、消費者態度指数、日経商品指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの4系列である。消費者態度指数、日経商品指数の2系列が前月差プラスである。東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの2系列が前月差マイナスである。

 

●また、7月分の先行DIでは、数値が判明している消費者態度指数、日経商品指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの4系列では、消費者態度指数、日経商品指数の2系列がプラス符号に、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの2系列がマイナス符号になることが判明している。7月分速報値段階の先行DIは22.2%以上77.8%以下になることが確定している。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2021年6月分景気動向指数(速報値)』を参照)。

 

(2021年8月6日)

 

宅森 昭吉

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

理事・チーフエコノミスト

 

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