「お客さまに来ていただいている」という意識を持つ
今は患者さんが歯科医院を選ぶ時代です。依然として、歯科医が人に尊敬されるすばらしい仕事であることは事実ですが、それと同時に歯科医院はサービス業であり、患者さんは「お客さま」なのです。
患者さんに接するときは「治してあげている」ではなく、「お客さまに来ていただいている」という、商売人のような心持ちでいなければ、患者さんに選んでもらえなくなっているのです。
それを心得ず、「歯科医師(サービスを提供する側)が患者さんに与えるイメージ」をまったく気にしないのは言語道断です。自分がお客さんで、入ったレストランの店員の態度が最悪だったら、腹が立つでしょう。置き換えてみればすぐわかることなのに、自分たちのことは棚上げして、好感度を上げる努力をまったくしていない先生もいらっしゃいます。
患者さんと接するときにまったく笑顔がなく無愛想だったり、しゃべり方がボソボソとして暗い印象だったり、ぶっきらぼうだったりする先生もたくさんいらっしゃいます。先生自身にはそれほど問題がない場合でも、受付などのスタッフの感じが悪いケースもよくあります。そんなスタッフ教育が行き届いていないような医院に通いたいと思う、心の広い患者さんはほとんどいません。
腕さえよければ、多少愛想が悪くても繁盛する――というのは幻想なのです。世の中には、腕に問題がなく、歯科医もスタッフもにこやかで感じがいい歯科医院がいくらでもあるからです。
診療時間中は「清潔感」で勝負する
患者さんに好かれるためには、何をさておいても、身だしなみをきちんとすることです。朝のうちに鏡で頭のてっぺんからつま先まで一通りチェックし、日中もトイレに行くたびに、自分の身だしなみを確認したいところです。
女性の場合、厚化粧、香水はNGです。香りつきのボディークリームなども避けてください。敏感な患者さんだと、わずかな香りをただよわせただけでも、「気分が悪くなる」といわれてしまうことがあります。
男性女性に関係なく、派手な印象を与える髪型や髪の色、服装(たとえ白衣の下でも)や、アクセサリーは避けたほうが無難です。これはビジネスマナーなどでもよくいわれることですが、揺れるデザインのピアスなど、自然に人の視線を集めてしまうものは避けてください。プライベートは自由ですが、診療時間中は何もかもシンプルさと機能性を重視し、清潔感で勝負しましょう。
特に気にする先生の場合、日焼けしすぎないように注意しているという話も聞いたことがあります。どこへ行ったわけではなくても「週末ゴルフに行っていたふう」や「ハワイ帰り」のように見られれば、「この人、さぞや儲けているのだろうな」などと、反感を持たれる原因になりかねないからだそうです。
口臭、体臭にも細心の注意を払う
加えて、口臭、体臭にも細心の注意を払うべきです。また、たばこのニオイには敏感な人も多いので、休憩時間に一服するのも注意したほうがよさそうです。なお、歯科医で口臭がきついというのは言語道断。スタッフともどもブレスケアには細心の注意を払いましょう。
マスクをしていれば大丈夫という考えは誤りです。そもそも、患者さんに向き合って説明をするときは、なるべくマスクは取るべきです。マスクをしていると、どうしても声がこもって聞き取りづらくなりますし、何より患者さんに対して無礼な印象を与えかねません。患者さんの側も、歯科医の顔や表情がわからないままでは、どことなく不安に感じる場合も多いはずです。
よって、翌日診療がある日の夜は、飲みすぎやにんにく料理などの食べすぎは厳禁です。以前お会いした歯科医の先生で、スタッフにも患者さんにも愛されるキャラの先生なのですが、朝まで飲み続けてしまい、自分の歯科医院の入り口の前で寝てしまったという話を、笑いながら話された先生がいらっしゃいました。
話としては面白いのですが、翌日の診療は大丈夫だったのかしら? と心配になったものです。患者さんは先生たちが思っているより敏感ですから、恐らく全身からただよう酒臭さや二日酔いのどんよりした雰囲気は、しっかり伝わってしまったでしょう。
気晴らしにパーッと飲みたいときは、もちろん飲んでもよいのです。しかし、翌日が休診日のタイミングを選んでください。自宅と歯科医院が近所にあると、通うのがラクですし、交通費もかからないというメリットがありますが、プライベートの姿を患者さんに目撃される確率は高くなります。ずっと居住まいを正して過ごすのも気づまりという理由から、あえて自宅と歯科医院の位置を少し離す(たとえば、自宅から電車で3駅先の街に開業するなど)こともよくあるので、開業場所選びの際に、検討してみてもいいでしょう。