「接遇マナー」は開業医として必須のスキル
前回に引き続き、職場としてよい歯科医院の条件④、⑤を説明していきます。
①院長が40~50代前半であること
②リコールシステムが整っていること
③先生方が興味のある治療をして繁盛している歯科医院であること
④院内の研修制度が整っていること
⑤院長の人間性が魅力的であること
④の院内研修制度の有無は、歯科医院によってまちまちです。比較的規模の大きな歯科医院だと、患者さんに質の高いサービスを提供するため、定期的に院内研修を実施していたり、外部の機関が行っている研修に参加させてくれたりするものです。
一般的に、研修のテーマは技術的なことから、プロのマナー講師を招いての「接遇」研修まで多種多様です。
接遇とは“思いやり、もてなす心”を持って、相手に礼を尽くすことです。最近は多くの歯科医院で、通り一遍の接客マナーではなく、患者さんの気持ちを第一に考えて振る舞う、接遇の重要性が意識されるようになってきています。
治療技術はもちろんのこと、接遇マナーも開業してから必須のスキルです。勤務医時代にしっかり学んでおくべきでしょう。
最後の⑤は院長の人柄ですが、これは非常に重要なポイントです。歯科医院を繁盛させているということは、経営者としてのすばらしさばかりでなく、人間的に何かしら魅力的なところがある可能性も高いと考えられます。
たとえば、自由診療の比率が高い歯科医院で成功している場合、院長の誠実な人柄と、的確な説明によって、患者さんから支持を獲得している場合も多いはずです。幸運にも、そのような院長の下で働けるときは、ぜひその会話力やコミュニケーションスキルを学んでください。
しかしながら、どうしても院長と性格が合わなかったり、さまざまな要因から尊敬できないような場合もあるかもしれません。そんなときも経験をムダにせず、院長を反面教師と捉え、逆に理想の院長像を思い描いてみましょう。
ただし、あまりにも耐えがたいなら、我慢しすぎず、早々に転職も考えることをおすすめします。そのようなストレスを抱えた状況で、大切な勤務医時代を過ごすのはもったいないからです。歯科医院の形はさまざまで、院長の人柄もまたさまざまですから、自分に合う勤務先を探しましょう。
職場選びは非常に重要・・・理想に近い歯科医院を探す
先に挙げた5つの要素をすべて満たしており、患者さんからの人気も高い歯科医院の場合、働きたいと考えても、競争率は高くなります。条件のよい勤務医の求人が多くはない今、募集に対して応募が殺到しがちだからです。
それでも、職場選びは非常に重要なので、簡単にあきらめず、少しでも理想に近い歯科医院を探してください。
では、勤務先で具体的にどんなことを学んでいけばいいのか、お話ししていきましょう。
まず、第一に学ぶ必要があるのは、当然ながら歯科医としての治療技術です。治療技術は経験を積むうちに向上するものですし、3~5年も努力していれば、平均的な技術力は培われるでしょう。もっとも、手先の細やかさが要求されますから、不器用を自認する先生は、もう少し時間がかかることもあります。
治療技術のほかにも、学ぶべきことは際限なくあります。院長先生の歯科医という専門職の側面と、経営者としての側面、両方を観察してください。ポイントは、先生ご自身が勤務医ではなく、院長先生=経営者としての視点で(院長になったつもりで)、院内のさまざまな物事に目を向けることです。必ず、今まで見えなかったことが見えてくるでしょう。