勤務医時代は「繁盛歯科医院」を観察できる貴重な期間
先生方の多くは大学の歯学部を卒業してから開業するまでの間の3~10年程度、勤務医として働くことになります。20代で開業する人がいる一方、40歳前後、あるいは定年まで勤務医を続ける人もいますが、多いのは30代前半での開業です。
仮に30歳で開業するとなると、勤務医として勉強ができる期間は5~6年。意外と修業時代は短いのです。
勤務医時代は、開業の先輩である院長を間近で観察する、絶好の機会です。いったん開業してしまったら、友人・知人を頼るか、自分が患者さんとしてよその歯科医院に偵察にでも行かない限り、繁盛歯科医院を観察できるチャンスはほとんどなくなります。開業後に、研修としてよその歯科医院を見学するということもありますが、時間が限られますし、自腹も切る必要があります。
それに比べると、勤務医時代は無料で勉強し放題です。技術はもちろんですが、繁盛歯科医院がどのような点に注意して歯科医院の外観・内装を造り上げているか。患者さんにどのような対応をしているか。診察室、待合室ではどのような気配りをしているか。スタッフとどう付き合っているか……などなど、数え上げればキリがないほど、学んでおきたいポイントはたくさんあります。
勤務医を雇っているのは、多くの患者さんが来院し、経営もうまくいっている勝ち組・繁盛歯科医院です。余裕のない歯科医院は患者さんが少ないので、歯科医は1人いれば十分です。勤務医を雇う必要はまずありません。
これから目指すべき繁盛歯科医院で働きながら、技術以外のことを何一つ学ばないままに開業してしまうのは、あまりにもったいない話です。
開業の先輩である院長は、勤務医であるみなさんが開業を視野に入れていることを、十分に理解しています。また、歯科医業界を取り巻く厳しい環境も、当然熟知しています。これから荒波の中に飛び込んでいこうとしている後輩・部下が、真摯な態度で質問したり、勉強する姿勢を見せたりすれば、快く指導してくれるはずです。
技術しか学んでいない先生は開業後に苦労する!?
開業に必要なことの多くはこの勤務医時代を通じて習得できます。不足する知識は、開業サポートを行う専門業者や歯科専門税理士などとタッグを組むことによって補うことがでます。勤務医時代から心配する必要はありません。勤務医時代は、繁盛歯科医院に在職しているからこそ学べる、治療技術と医院運営の習得に力を入れてください。20代で開業しても、1人で十分うまくやっている先生もいるわけですから、「まだ自分には早い……」などと過剰に不安がることはないのです。
勤務医時代は、歯科医としての考え方や、これから進む方向、さらには開業後の成否をも決めてしまいかねない大切な時期です。開業医として成功する人は、この勤務医時代を決して無為には過ごしません。そう心しておけば、勤務医として働く毎日が、貴重な勉強の時間の連続であることがわかるでしょう。
それでも、開業相談に来られる方の中には、「勤務医時代に学べること」に関する質問を多々受けます。
技術以外は学んでいない状態では、開業するときに、たとえば、スタッフ募集の仕方からおつりの用意の仕方まで、わからないことばかりで苦労することになります。
「医療コンサルタントに依頼すれば、開業に必要なことは全部引き受けてもらえる」という考え方もあるかもしれません。たしかに、コンサルタントに頼めば手取り足取り教えてもらえるでしょうが、勤務医時代に自力で習得した先生とそうでない先生では、開業後の歯科医院経営にも違いが出てきます。
コンサルタント頼みではなく、実際の経験から学んだほうが、身につくことがたくさんあるのです。勤務医時代は「黄金の時代」です。常に学ぶ姿勢を忘れないでください。