「チャレンジ精神旺盛で勢いのある職場」を選ぶべき
現在学生の方、あるいは勤務医として別の歯科医院への転職を考えている先生には、慎重に勤務先を選ぶことをおすすめします。そこでの貴重な経験を開業時の糧にしなければならないわけですから、なるべく得るものが大きい職場を探すべきです。
職場としてよい歯科医院の条件としては、次のようなものが挙げられます。
①院長が40~50代前半であること
②リコールシステムが整っていること
③先生方が興味のある治療をして繁盛している歯科医院であること
④院内の研修制度が整っていること
⑤院長の人間性が魅力的であること
順に説明していきましょう。
まず、①の40~50代前半の院長が望ましいのは、一般的にいって、この年代の歯科医が最も脂が乗っているからです。30代ではまだ開業してからの経験が浅いですし、60代ですと〝引退〟が見えてきます。引退間近だと、これからさらにいろいろなことに取り組んで、歯科医院をもり立てていこう――といった前向きな意欲がわきづらくなるものです(もちろん、例外はありますが)。チャレンジ精神旺盛で勢いのある職場のほうが、学ぶべき点が多いのは、いうまでもないことです。
ちなみに、歯科医は細やかな作業を要求され、かなり目を使う仕事です。そのため定年はせいぜい65歳くらいです。すべての人がそうだとはいえませんが、70代でも名医といわれる先生は少数派であることは間違いありません。
「治療」から「予防」へシフトする歯科医療
②のリコールシステムについては、今後の歯科医療について、虫歯治療が減少し、歯科医師が増加していく中、「予防への取り組み」が重要だからです。昔の歯科医院は「痛くなったらまた来てください」で終わりでしたが、今の歯科医院は定期検診で病気を早期発見・早期治療するために、アフターケアを重視しています。それは患者さんにとってメリットになりますが、歯科医院にとっても患者さんがリピーターとなり、定期的な安定収入を確保できるために、大きな意味を持っています。
ただ、患者さんは現状に特に問題がなければ、検診に行くことを忘れたり、後回しにしたりしがちです。ハガキやメール、あるいは独自の工夫によって、リコール率を上げる取り組みをしている歯科医院を選べば、お手本にできます。
続いて③の興味のある治療をしている歯科医院とは、たとえばインプラント、歯周病、再生療法など、何かしらの強み、専門分野を持っている歯科医院を指します。
将来的に、「この分野を中心とした歯科医院をやっていきたい」という明確な展望があるなら、すでにその分野で成功している歯科医院を探してみてください。分野によっては数が限られているものもありますが、うまく採用されれば、その後の開業に必要な治療技術を実践的に学ぶことができます。