(※写真はイメージです/PIXTA)

平穏だった、サラリーマンの夫と専業主婦、子ども2人の生活が、夫の突然死によって激変。団信で住宅ローンは完済、退職金と保険金で1億円近い現金を手にしますが、子どもが小さくフルタイム勤務ができない妻は、資産の目減りが気がかりです。資産を減らすことなく、相続対策も実現する方法はあるのでしょうか。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに解説します。

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    「いまある資産」を減らしたくない…対策はあるか?

    筆者は預貯金の減少などを考慮したうえで、田中さんの相続のときの相続税額を試算したところ、およそ1500万円程度となりました。それに基づき、複数の対策を提案することにしました。

     

    [対策1]収入確保のため、賃貸不動産を購入

     

    預金のままではほとんど利息がつきません。そのため、賃貸不動産を購入するよう提案しました。毎月の家賃が入ることで安定収入となり、フルで仕事ができないとしても、生活不安は軽減します。田中さんはすぐに決断しました。長期にわたって保有することを考え、人気の高いエリアの物件を選択・購入しました。

     

    購入したのは2800万円と3000万円の物件で、家賃は合計で月額22万円。管理費、修繕積立金を引いた手取りは約18万円となります。

     

    [対策2]不動産は資産価値のあるものを複数購入


    2人の子どもが将来の相続でもめることのないよう、中古の区分マンションを2つ購入しました。分割に配慮したうえ、価格帯にも考慮して売却もしやすくしました。

     

    財産を不動産にしておくことは、相続税の節税だけでなく、家賃収入のある財産を得られることで、受け取る側にもメリットがあります。

     

    また、需要の多い単身者用のコンパクトな物件にしておけば、市場性があり、売却時も不安はありません。 定期的な家賃収入を得ながら節税対策ができ、遺産分割の対策にもなったことで、田中さんの不安は軽減できたのです。

     

    [対策3]生命保険に加入し非課税枠を適用する

     

    田中さんは夫が亡くなるまでは夫の扶養家族だったため、まとまった生命保険には入っていませんでした。そこで、2人の子どもがそれぞれ1000万円の生命保険を受け取れるように、一時払いの生命保険に加入。非課税枠の500万円を適用できるようにしました。

    資産の組み替えは「一度やればおしまい」ではない

    田中さんは不動産と保険の対策を同時に決断したことで、家賃収入を得ながら将来の相続税を節税することが可能となりました。

     

    近年では、まとまった現金を保有していても利息がつかないだけでなく、相続時にそのままの評価額となり、高額な相続税がかかってしまいます。しかし、現金で不動産を購入したことで、資産としての評価が下がり、相続税の基礎控除内の財産額とできる結果となりました。

     

    しかも家賃収入が入って生活費に使えますので、不動産を維持しつつ、節税対策もできたということになります。

     

    田中さんはまだ40代ですので、今後、子どもの成長やご自分の生活に合わせて資産の持ち方や対策を見直す必要もでてきます。資産の組み替えは一度行えば終了ではありません。状況に合わせてフレキシブルに対応しつつ、安定収入確保の道を探ったり、資産を組みなおしたりすることが大切なのです。

     

    ※プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

     

     

    曽根 惠子
    株式会社夢相続代表取締役
    公認不動産コンサルティングマスター
    相続対策専門士

     

    ◆相続対策専門士とは?◆

    公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。

     

    「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

     

    本記事は、株式会社夢相続が運営するサイトに掲載された相談事例を転載・再編集したものです。

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