資産家の父が亡くなり、悲しみに沈む家族のもとに、確定申告を請け負ってきたいとこが「相続手続きはどうなっている!」とねじ込んできて、なし崩し的に依頼することに…。しかし、高圧的な対応を取る一方、手続きは遅々として進みません。期限までに間に合わせることはできるのでしょうか。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに解説します。
病気発覚から、たった3ヵ月で旅立った父
今回の相談者は、50代専業主婦の和田さんです。農家で大地主の父親が亡くなり、相続が発生したのですが、相続手続きを引き受けると申し出た、親戚の税理士に任せたことで大混乱をきたしてしまい、困っているということでした。
亡くなったのは80代の父親で、亡くなる3ヵ月前に病気が発覚し、あっという間の旅立ちだったといいます。相続人は、父と同じ80代の母親と、長子で長女の和田さん、そして会社員をしている2人の弟(50代、40代)の合計4人です。
和田さんは父親を亡くし、母親と2人の弟の4人で 相続税の申告をすることになりました。父親が健在のときに、農地の半分程度が区画整理されて宅地に変更となり、節税対策のために複数のアパートを建設・運営しています。そのような経緯もあり、相続対策をなにも取らなかったわけではないのですが、それでもまだ土地が多くあるため、不安があったといいます。
「相続手続きはどうするんだ!」いとこの税理士が登場
父親は農業のほか高額な賃貸収入も得ていため、毎年の確定申告は、親戚の税理士に依頼していました。父親の一番上の兄の長男で、和田さんにとっては年上のいとこです。
無事に葬儀を終えて2週間後、和田さんの家族が実家に集まって四十九日の相談をしていたときでした。突然、例のいとこが来訪しました。そして、挨拶もそこそこに大声を上げました。
「叔父さんの相続税の手続きはどうするんだ! さっさとやらないと終わらないぞ。来週までにこの書類を全部そろえて俺のところに持ってきてくれ!」
いとこは必要な書類の一覧を書いた用紙を投げてよこすと、和田さんの父親にお線香をあげることもなく、そのまま乱暴に扉を閉めて出ていきました。
和田さん家族は、そもそも相続手続きをこのいとこに頼む考えはなかったのですが、あまりに高圧的な様子に断るのも恐ろしく、そのままズルズルと依頼することになってしまいました。
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株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書65冊累計58万部、TV・ラジオ出演127回、新聞・雑誌掲載810回、セミナー登壇578回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2021年版 (別冊ESSE) 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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