「なぜ…」と聞かれたら、理由を考える絶好のチャンス
勉強の理由は人によって異なるのは言うまでもありません。私が絵を勉強しているのは絵本作家として世界中の子どもたちに絵本を届け、気楽に生きていっていいんだよということを伝えたいからです。
多くの日本人が英語の勉強をしておられるのはなぜなんでしょう。なかにはキャビンアテンダントとして活躍したいからという人もいれば、科学者として論文を書く日のためにひたすら語句を覚えているという理系の生徒もいるはずです。
人によって勉強の理由は異なります。むしろ、子どもたちはその理由を自分で見つけることが大切なのですね。それが見つかり、そしてその回答が東大にあるならば、目指す姿勢が顕著になります。
「なぜ勉強しないといけないの?」と聞かれたときに、子どもと向き合ってしっかり話してみてほしいのです。たいてい、子どもが勉強したくないときに、抗議のごとく発せられる言葉なので、親御さんもムッとして「そんなこと言っていないで勉強しなさい」と言ってしまいたくなるかもしれませんね。でも、それは子どもが勉強の意味を知る、理由を考える絶好の機会なのです。
「お父さんはこう思う」「お母さんはこう思う」と話してみましょう。もちろん答えなどありません。親の考えを伝えたうえで、子どもが自分の人生をどう送るのか、そしてそのためにはどういう勉強が必要なのかを考えることになるのです。勉強の理由を理解したうえでないと勉強には身が入らないものです。だからお子さんから勉強の理由を尋ねる質問を投げかけられたら、それは絶好の機会なのですね。
ちなみに私はまったく勉強をしていなかった子どもでしたが、少しだけ変わったきっかけは中学3年生のときの担任の先生との出会いでした。その先生と出会っていなかったら、おそらく私は今の人生を送っていないはずです。先生は「君の書く文章は非常に面白い。たぶん僕なんかよりずっと書くのがうまい。将来は文章を書いて生きていけば、君はきっと成功するよ。作家でも新聞記者でもなんでもいい。文章を書いて生きていきなさい」と言ってくれました。
とはいえ、「はい、わかりました」と素直に受け入れるほど、子どもは純粋ではありません。「はぁ、そうですか」というようなリアクションでした。しかし、嬉しかった。嬉しかったので、文章に関して勉強をするようになりました。自分が師匠と決めた作家、遠藤周作(えんどうしゅうさく)さんの本を読み漁(あさ)りました。古文もしっかり勉強しました。英語もしゃべれたら格好いいな、ノーベル文学賞を受賞したときに英語で話せないといけないかもなと思って勉強しました。
私の勉強の理由は「作家になるため」でした。今もこうして原稿に向かっている時間を幸せに感じています。
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