東大合格者も…成績優秀な子の勉強場所は「リビング」
成績優秀な生徒に聞くと、多くは中高生になってもリビングで学習をしています。
子どもに限らず人間は皆、やっぱり楽をしたいものです。だから第三者の目があったほうが、だらけてしまう気持ちにストップがかかっていいのです。生徒本人もそれに気づき、あえて第三者のいる場で勉強するようです。
東大に受かる生徒というのは、「そもそも人間は楽なほうに流れるものだ」とか「自分はあまり頭が良くない」ということを意識しています。その前提で、ではどうすれば勉強できるようになるか、どうすれば記憶していられるかを実践しているのです。東大に受かる子は、自分が完璧ではないことを知っているのです。
リビングを「勉強するのが当たり前」な環境として提供
一人の空間で勉強をやっていると、気づけばスマホを触っていたり、近くにある漫画に手が伸びたりするのは、普通のことです。大人でもそうですよね。人間は一人だと誘惑には弱いものです。
一方、近くに親がいる、兄弟がいる。ましてやその人たちも本を読んだり勉強したりしている、となると自然に勉強するしかなくなります。ちょっと休憩を取るときも、一人だったらちょっとゲームでもしようかとなるところが、リビングなどではお茶を飲むぐらいになります。もちろん親がゲームをしたりテレビを見たりしている横で勉強をしても集中できないので、そうすると自然と親も子どもが勉強している横でそれなりに知的な活動(新聞や本を読むなど)をすることになります。
「勉強するのが当たり前」という環境こそが大事で、それを作ってあげられるのは家庭です。勉強机を買ってあげて、本棚にたくさん本を入れてあげて、「はい、勉強してください」といっても、子どもは勉強しません。
「こんなに与えているのに」ではなく、「人間って楽をしたくなる生き物だ」という前提で、環境を整えてあげてください。
勉強しない子の「親」ほどやりがちな問題行動
沖縄で「おきなわ学びのネットワーク」というNPOを作りまして、もうずいぶん前からボランティア活動をしています。新型コロナウイルス感染症が蔓延(まんえん)する前には、年間に数回は無料勉強会を行っていました。沖縄本島で開催するときは興南(こうなん)中学校・高等学校をお借りし、石垣(いしがき)島で開催するとき八重山(やえやま)高等学校をお借りしています。
興南をお借りして、勉強会を行ったある日のこと。終わったあとに質疑応答に入ります。生徒たちからの質問が終わると、今度は保護者からの質問を受け付けます。
ある保護者が手を挙げました。「うちの子はまったく勉強しない」とおっしゃいます。私は本稿や著書に書いてあることを、短時間ですので全部は話せないのですが、まとめながら話しました。
そうすると「でも勉強しなさいと言わないと、いや、言っても勉強しない! 勉強できる子は自分からするだろうけど、うちの子はしない!」と叫ぶようにおっしゃったんですね。
勉強できる子も自分からはなかなかしないということ、勉強しなさいと言うとさらにやる気を失うので言わないほうが良いということを嚙(か)んで含めて話したあとに、このように申し上げました。
「ところでお母さん、あなたはどういう勉強をされているんですか?」と。
そのお母さんは呆気(あっけ)にとられた表情をして固まっておられます。「周囲の大人が勉強していないのに、子どもが勉強すると思いますか?」と申し上げると、恥ずかしそうな顔をしながら頷(うなず)いておられました。
家庭環境って特に大事です。子どもに「スマホばっかり触っていないで」と注意しながら、親自身がずっとスマホを触っているということはありませんでしょうか。親がだらだらとSNSをしているのに、子どもが勉強しないでいると小言を言ってしまうことはありませんか。
子どもに勉強してほしいと思っているなら、親ができることは環境づくりというのはお伝えしました。ただ、その環境には親の行動も含まれます。
親が遅くまでテレビを見ている家で子どもだけが勉強する気にはなりません。中高生に親が勉強を教えるのは大変だと思いますが、勉強できる雰囲気を作ることならできますよね。家庭が勉強する場になっていることはとても重要です。夜8時ぐらいには親もテレビを消して読書をしているのが普通の家なら、なんとなく子どもも勉強でもするか、となるものです。
忙しい親でも「勉強するのが当然」な環境はつくれる
親自身も勉強している姿を見せるのは効果的ですが、それが難しいご家庭でも心配はいりません。教え子のL君の家は寿司(すし)屋です。夜遅くまでお店をやっているため、家で親がじっくり勉強を教えたり読書をしたりできるという環境ではありません。しかし、親の働いている寿司屋に一歩入れば、一生懸命働く両親が見えます。親ががんばる姿を見ると、子どもだけ遊んでいようとはなりづらいものです。
親にとっても教員にとっても、もっとも大切な仕事は努力している背中を子どもたちに見せることです。こんな大人になりたいと思わせることができれば、子どもたちは主体的に勉強をするようになります。
木村 達哉
作家、元英語教師
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