(※写真はイメージです/PIXTA)

受験生から「キムタツ」の愛称で親しまれる筆者は、かつて英語教諭として灘校や西大和学園に勤め、500人以上の教え子を東大に合格させた人物。33年間の進学校での教員経験から、成績が良い子とそうではない子の決定的な違いをたくさん知っています。本稿ではその1つを見ていきましょう。※本連載は、木村達哉氏の著書『「東大に入る子」が実践する勉強の真実』(KADOKAWA)より一部を抜粋・再編集したものです。

暗記上手な子ほど「声に出しながら」勉強している

勉強するとき、声を出していますか。まぁいろんなタイプの人がいますから、もしかしたら灘校の生徒たちだけかもしれませんが、成績の良い子ほど声を出すように思います。これは暗記という点からすれば当然のことなのです。

 

たとえば、電話番号を覚える際(最近は覚えることもないですけれども)、声に出して覚えますよね。ところが、文章や数字を読む際に、文字を目で追うだけになっている生徒が多いように思います。日本中の学校を訪問して出張授業をする際に長文を配付し、英文を読んでごらんと言うと声を出さない生徒が大半ですし、覚える際でさえも声を出さない生徒がかなり多いのが実態です。

 

覚えたい対象があるときに、それにアクセスする道筋は多いほうが定着しやすくなります。『ユメタン』を作ったときに茂木健一郎(もぎけんいちろう)さんの本を読み、脳科学について勉強をしましたが、「全部の器官をフル動員」させ、目で見て、口で発声して、耳で聞き、手で書く。これを自分の脳に刷り込むイメージで行うと効果的で覚えやすいと書いてありました。

 

確かにその四つのアクセスで覚えている生徒は、暗記が上手です。下手な生徒は目だけで覚えようとします。情報源に対して一つや二つのアクセス数しかないよりは、三つか四つあるほうが確実に覚えるスピードは速くなりますし、忘れにくくなります。暗記といったどうしても時間が必要な勉強、そして重要な勉強は、効率良く行いたいですよね。

 

これは言うまでもなく英語に限った話ではありません。理科も地歴公民も同じです。

 

特に英語をはじめとした言語学習に関しては、音なしで勉強するのは言語道断。家で復習するときにも、必ず音声を聞くように伝えています。

 

灘校では「声に出す勉強スタイル」が常識

私の授業では、さぁ英単語を覚えようとなると、生徒も慣れたもので、私が何も言わなくても、クラス中がいっせいにぶつぶつと英単語をつぶやきはじめます。ひとクラスに55人ほどいますので、それはもう教室が賑(にぎ)やかになります。一人ひとりが自分のペースで単語を読み上げていくのです。

 

中学1年生からそのスタイルを続けているので、高校から入学してきた新入生は、最初はその光景に圧倒されます。「なんでこの人たち、こんなに声出しているんだ」と。でも自然と同じようにぶつぶつとつぶやき始めるようになりますが。なぜなら、それがもっとも覚えやすいとわかるからです。

 

成績の良い生徒ほど、覚えるときは必ず声に出して覚えています。成績が悪い生徒に限って目だけで覚えています。教室を見たら一目瞭然(いちもくりょうぜん)です。

 

本当に大事なことなので、6年間生徒を持つ間に、「声を出しなよ」と何百回も生徒に伝えていますし、そのたびに生徒たちから「わかってるよ」という顔をされています。

 

覚えれば覚えるほど、力が高くなることは間違いありません。暗記は苦手ですという人がいますが、暗記が苦手なのは単に反復回数が足りないか、あるいは声を出していないからだと思われます。

声に出せば、誰でも「英単語100語」は10分で暗記可能

もう一つ、大切なことを書きます。たとえば、英単語を100語覚えることにします。100単語の暗記ってどういう印象を持ちますか。大多数の人は「100語を覚えるのは大変だなぁ」と感じます。

 

しかし、100語が10分で覚えられるという事実がわかったらどうでしょうか。「やってみようかな」となりませんか。たかが10分です。休憩時間を含めても30分もあれば覚えられます。

 

やり方は簡単です。まずは100単語の中の10単語からスタートします。10単語を覚えるのにどのくらいかかると思いますか。おそらく1~2分です。「灘校の生徒だからそんなに早いんだろう」と思われるかもしれません。しかし、私は各地の学校に呼ばれて授業をしていますが、偏差値が40ぐらいの学校に行って試したときも、みんな1分で10単語覚えていました。頭の良し悪しなどは関係ありません。もちろん、前述のとおりに声を出します。『ユメタン』の音声に合わせながらです。目で見て、聞いて、声を出しているのです。

 

10単語を1分なら、単純計算で100単語は10分ですよね。2分だとしても20分。一日20分ならできそうな気がしませんか。暗記の分量に圧倒されず、何分で覚えられるかをきちんと把握すると、予想以上に覚えられるものです。もちろん一回覚えた100語はあっという間に忘れてしまいますので、翌日にも同じことをするのです。1週間毎日その100語を脳に叩(たた)き込むことによって、九九と同じような脳への刷り込みが行われるのです。

 

覚えるのが苦手な人の場合、全部を一気に覚えようとします。しかし、まずは細分化することを考えてみることです。それは地歴公民にしても同じです。奈良時代を覚えたら、毎日それを覚えます。平安時代を覚えたら、さらに毎日それをやります。7日目にはもうすっかり脳に刷り込まれているはずです。

「何分で覚える」という時間設定が重要

先ほどご説明した英単語の覚え方もそうですが、中学高校のすべての勉強において、覚える際に時間を意識するのは大切なことです。

 

必ず生徒に伝えるのは「これは●分ぐらいでできるはずだ」ということです。単に「覚えなさい」ではなく、「これを5分で覚えなさい」と言います。単に「覚えなさい」ではだらけてしまうんですね。

 

大人の場合、ある仕事をするのに午前中いっぱいかかるななどと終わりの時間を意識するはずです。この仕事とあの仕事を合わせて、だいたい3時間かかるから、午前中には終わらせられるはずだなどと考えますよね。

 

生徒たちの場合はあまり期限を切らずに、鎌倉時代まで覚えようとか、この古文単語集の第1章を覚えようなどと考えがちです。何をやるときでも、どれぐらいの時間で覚えるのかを設定することは大事ですし、それによって緊張感を持って勉強することができます。

 

 

木村 達哉

作家、元英語教師

 

 

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木村 達哉

KADOKAWA

30年を超える指導経験で分かった、東大合格者を出す家庭の共通点とは? 勉強の意味を知り、正しい勉強のやり方を知っていれば、どんな子でも東大は合格できる! 難関大学合格のために欠かせない「勉強体質」を家庭でいか…

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