(※写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、東海東京調査センターの中村貴司シニアストラテジスト(オルタナティブ投資戦略担当)への取材レポートです。今回は、「アクティブファンド」の運用方法の変化について見ていきます。

「伝統的なアクティブ運用」から「戦略分散」の時代へ

アクティブファンドと比較してインデックスファンドは、コストが安く、かつ適度に分散投資された投資対象資産として、機関投資家や個人の間で人気を博し、残高を大きく伸ばしている。

 

その背景として、ストロング型の効率的市場仮説を支持する動きに加え、アクティブファンドとの実績比較などもインデックスファンドの選好を後押ししているようだ。実際、過去10年程度の実績において、日本のアクティブファンドがインデックスファンドを上回る実績を上げたものは全体の3~4割程度であり、アクティブファンドの苦戦が続いている。

 

このように、インデックスファンドに対する苦戦が続く状況下、ファンダメンタルズ中心のアクティブファンドマネージャーのなかには、差別化と存在意義を打ち出すため、市場には「セミストロング型」ではなく「ウィーク型」の効率性があると強く主張する者も多い。

 

なぜなら、市場がウィーク型であれば、自ら用いる「ファンダメンタルズ分析」は有用であると打ち出すことができるからだ。その一方で、伝統的ファイナンスのアカデミックな見地から、経験則的で科学的な根拠が乏しい投資手法として「テクニカル分析」を活用するその他の投資家を真っ向から否定することができる(非合理的なノイズトレーダーとみなすことができる)。

 

しかし、ウィーク型の効率的市場の反証や業績要因の市場インパクトの低下となりうる以下の8点から、テクニカル分析を真っ向から否定し、ファンダメンタルズ分析を信奉するアクティブファンドマネージャーに大きなプレッシャーがかかり始めているのも事実である。

 

① 効率的市場仮説を真っ向から否定し、アノマリーの存在を導く「行動ファイナンス理論(投資戦略含む)」の登場

② クオンツ運用における「モメンタム」の有効性の存在とその活用(モメンタム投資戦略の有効性の実証研究は世界で多数存在)

③ ヘッジファンドの代表的な戦略の一つで長期的にリスク・リターンが良好な「CTA戦略」の隆盛(テクニカルのファクター感応度が比較的高く、トレンドフォロー戦略を主に活用)

④ AIやオルタナティブデータなどを活用した「パターン存在」の実証研究

⑤ テクニカル分析を活用した「個人投資家」の存在感の高まり(ネットやスマホによる取引の拡大に加え、それらを通じたAI・フィンテックやレバレッジツールの普及・活用などが自己実現性を後押し)

⑥ トレンド投資家によるバリュー投資家の駆逐経路を実証する「エージェント・ベースト・モデル」

⑦ ダウンサイド抑制型ポートフォリオ構築のためのテクニカル戦略による「歪度管理」

⑧ 市場に与える「非財務要因」の影響度の拡大(日本における長期的なバリュー効果の低減に加え、業績要因との比較で非財務的なその他要因の市場に与える影響度の趨勢的な高まりなどの実証分析)

 

これらを考慮すれば、やはり時代は、伝統的ファイナンス理論をベースとしたファンダメンタルズ分析の“一強時代(伝統的なアクティブ運用の時代)”から、インデックス運用とともに行動ファイナンス、テクニカル、AI、ESG、その他多様な運用手法・戦略が群雄割拠する”戦略分散の時代(オルタナティブなアクティブ運用の時代)”に入ったと言えるだろう。

 

そのような時代の流れを掴み、多様な運用戦略を持つヘッジファンド投資を個人の資産運用にも上手く活かしていきたい。

 

中村 貴司

東海東京調査センター

投資戦略部 シニアストラテジスト(オルタナティブ投資戦略担当)

 

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このレポートは、投資判断の参考となる情報の提供を目的としたもので、投資勧誘を目的としたものではありません。投資判断の最終決定は、お客様自身の判断でなさるようお願いいたします。このレポートは、信頼できると考えられる情報に基づいて作成されていますが、東海東京調査センターおよび東海東京証券は、その正確性及び完全性に関して責任を負うものではありません。なお、このレポートに記載された意見は、作成日における判断です。

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