「コロナ特需」「不動産バブル」の恐しい今後…
■住宅用地も「コロナ特需」で品薄になった
コロナ禍で景気が悪化、今後、所得の低下が想定されるようになり、国民の生活防衛意識が一段と強まっている。住宅コストの削減を目指すファミリー層は、超低金利を利用して、住宅購入に踏み切る動きが活発化した。
「低価格帯」が中心ではあるが、新築・中古を問わず、マンション、戸建て住宅、注文住宅など、全住宅分野にわたってコロナ特需が生まれたことで、住宅用の土地の需要拡大に弾みがついている。
個人の注文住宅用地が求められ、さらに、分譲戸建ての事業用地も売れ行きが好調なことで、新規供給のための土地の手当てに、建売業者が一斉に走り始め、また、ハウスメーカーも需要拡大により、土地の手当てが必要となり、土地は品不足の状態になった。
2020年5月までの厳しい状況が劇的に変化し、住宅用の地価は高止まりした。コロナ特需が生まれたことで、住宅需要が急拡大し、市場の在庫が減少すると共に、業界の在庫も、これまでの増加傾向から、一気に減少傾向へと変化していった。
その結果、住宅業界は新規供給を迫られることになった。土地の需要が拡大し、住宅用地が品不足の状態になってしまった。
しかし、コロナ禍による住宅特需はあくまで「特需」であり、長期にわたっていつまでも現在の過熱した状況が続く保証はない。2021年6月の完全失業者は206万人と17ヵ月連続で増加しており、完全失業率は2.9%となった。2021年5月の有効求人倍率も1.09%で、低水準となっている。
新型コロナに関連した雇用の悪化は、まだ始まったばかりであり、今後さらに悪化していくものと考えられる。雇用の悪化は、個人所得の低下や失業を生み出し、住宅購入意欲を弱めると同時に、購買能力の低下を招き、住宅市況の停滞も予想される。
2013年頃から始まった日本の不動産バブルは、異次元の金融緩和と超金利という金融の下支えと、相続税の強化という税制、マイナス金利による心理的な下支え、さらに、コロナ褐による住宅特需で、他の業界とは一線を画した追い風を受けることができた。
しかし、人口減少、所得の低下、空き家の増加等の事業環境を考えると、住宅用地の品薄感は一過性の現象と言える。今後の景気動向によって、「一過性の期間」が決まることになる。
住宅地価の長期トレンドとしては、アベノミクスバブルによって高騰した地価の調整が本格化していくのは、これからとなることが想定されるが、すでに緩やかではあるが、多くの地域で住宅地価の下落は始まっている。
幸田 昌則
不動産市況アナリスト