コロナ禍で空室目立つ「オフィスビル」…米国に見る日本の今後 ※画像はイメージです/PIXTA

新型コロナショックによる不動産市場への影響は、住宅地のみならず大都市圏のオフィス街にも及ぶ。オフィスビル賃料のこれまでとこれからを不動産市況アナリストの幸田昌則氏が解説する。 ※本連載は、書籍『アフターコロナ時代の不動産の公式』(日本経済新聞出版)より一部を抜粋・再編集したものです。

コロナ禍の「オフィス街」にあらわれる深刻な問題

安倍政権誕生後の一段の金融緩和で、3大都市圏で景気回復を期待して大量のオフィスビルが建設された。その後の景気拡大によって、企業の業績は向上、さらに、IT企業の台頭、貸し会議室やシェアオフィスの急拡大などで、この数年問、需要が強まり、オフィスの空室率が低下してきた。それに伴い、東京都心のオフィスビルの賃料が上昇し、リーマンショック直前の高値を超える水準となっていた。

 

しかし、コロナ感染拡大が鮮明となった2020年春以降から、テナントの退去が増加したり、スペースの縮小、拠点の整理・統合などによる解約が相次いだ。

 

一方、景気の先行きが見通せないこともあり、テナント側も慎重になっていて、新規の成約も少なく、空室が2020年の夏以降、急激に増加している。

 

2大都市圏のテナント募集中のオフィス物件数の推移を示したものである。リーマンショック直後には大量の空室件数があったが、その後は、賃貸オフィスの供給が続いたにもかかわらず、空室数は減少し、2019年までは賃料も強含みに推移してきた。

 

しかし、コロナ禍による景気の悪化と、在宅動務など働き方の見直しが進行してきたことで、オフィス需要の減退が鮮明になっていて、賃料下落の圧力が増している。今国の需給関係の変化は、単なる不況によるものではなく、テレワークの普及などによる需要の「構造的な変化」も加わっていて、今後の市況の急速な回復はきわめて難しいと思われる。

 

テクノロジーのさらなる進化によって、従来型のオフィスは不要になるという極論も出ているが、いずれにせよ、オフィス市場にもコロナ禍の影響が強く及んできている。

 

オフィス需要の構造的な変化は、今までは、景気後退の局面になると、概して都心部よりも、周辺・郊外のオフィスが、先行して空室が目立ってくるというパターンであったが、今回のコロナ禍では、むしろ都心での空きが先行している。

 

このような従来とは異なる動きになっている要因の一つは、都心の大型オフィスビルのテナントの大半が大企業であり、彼らこそが働き方改革に積極的になっているからと思われる。テレワークについての調査結果を見ても、大企業の方が中小企業に比べて意欲的であるし、テレワークをする環境をすでにつくっている。在宅勤務がさらに定着していけば、都心のオフィスニーズは減少に向かうことになる。

ネットワーク88 代表 

福岡県出身。九州大学法学部卒。不動産市況アナリストとして、バブル崩壊以前の1989年に関西圏から不動産価格の下落を予測。現在、ネットワーク88を主宰、不動産業の経営、事業・営業戦略のアドバイスなどに活躍中。著者に『不動産これから10年のトレンド』『リクルート・江副浩正から学んだ「成長の経営哲学」』など多数。

著者紹介

連載アフターコロナ時代の不動産の公式

アフターコロナ時代の不動産の公式

アフターコロナ時代の不動産の公式

幸田 昌則

日本経済新聞社

新型コロナの感染拡大で、不動産市況も大変化。 アベノミクスによる異次元の金融緩和によって演出された不動産バブルは、すでにピークを過ぎていたものの、2020年の新型コロナウィルスの感染拡大により、まったく違った局面…

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