※画像はイメージです/PIXTA

コロナ禍は人々の生活に大きな変化を与えてきた。転換点を迎えたのは、不動産市場も例外ではない。安倍政権発足以降、急騰していた商業地の坪単価は今後…。不動産市況アナリストの幸田昌則氏が解説する。 ※本連載は、書籍『アフターコロナ時代の不動産の公式』(日本経済新聞出版)より一部を抜粋・再編集したものです。

「低価格帯の住宅」が伸びる…コロナの経済への影響は

2021年以降の不動産市況は、景気動向にも影響され、「コロナ特需」と「景気」との綱引きになる。

 

2020年8月以降、雇用情勢の悪化が顕在化して、失業率が3%を超えて、完全失業者数は200万人を超えた※1。特に、パートや契約社員らの非正規雇用が減少した。有効求人倍率も、コロナ禍で低下傾向が続いている。

 

※1 2021年7月の完全失業率は2.8%。完全失業者数は191万人で18ヵ月ぶりに減少した。

 

新型コロナに関連した解雇・雇い止めにあった人数も、2020年9月末には6万人を超えた。大企業でも、業種によって経営環境が一段と厳しさが増している。中小企業では、経営者保険の解約が急増しているし、資金繰りのための保有不動産の「換金化」の動きも出ている。

 

需要が激減している航空業界では、全日本空輸は希望退職を募集、年収ベースで3割減の給与カットをするという。給与減額の対象となる社員は約1万5000人になるとのこと、他の企業にも同様のことが相次ぐことは必至と思われる。各社とも売り上げの拡大が期待できないことから、人件費・オフィスコストの削減が急務となっている。

 

コロナ禍の長期化で、大企業・中小企業を問わず、経営環境の悪化によって企業の「資金繰り」は急速に苦しくなった(日本銀行「全国企業短期経済観測調査」より)。

 

同時に、雇用状況も人手不足から一転して「過剰感」が出てきた。

 

このような状況を反映して、労働者の賃金は、2020年4月以降、減少が続いた。平均現金給与総額の減少は、コロナウイルスの影響によるもので、労働時間が減少、残業代が減少した結果である。

 

この動きは、家計調査の2人以上世帯の消費支出にも反映されている。前年比割れは2020年8月時点で11ヵ月連続となった。航空・鉄道運賃、飲食代、口紅などが大幅に減少している一方で、「巣ごもり」関連の支出は増加している。特に、マスク・ガーゼなどの消耗品や、ゲームソフトも大幅に増加している。

 

「住宅」も低価格帯を中心に伸びている。いずれもコロナ禍で住宅や住まい方への関心が高まったことによる。

 

コロナショックは、経済の停滞・悪化をもたらしたと同時に、新たな「生活様式」と新たな「働き方」を模索することになったが、コロナ禍が収束したあとに、元に戻るのか、新しい時代の始まりとなるのか、現時点では確かではない。

 

しかし、生活様式や働き方に「多様性」が生まれたのは確かである。

 

働き方も、テレワークかオフィスか、ではなく、業種や仕事の内容によって選択できるようになっていくものと考えられる。また、両者を巧みに利用したハイブリット型(混合型)も考えられる。働き方の「多様性」がどの程度、受け入れられていくのかによって、オフィスや住宅・店舗の需給状況も変化していく。

 

今後、不況が深刻化すると、企業は規模の縮小、コストの低減を余儀なくされ、オフィスや店舗の縮小・整理が行われていく。それに伴い、賃貸オフィス、店舗のテナントの退去や面積縮小の動きが出てくると同時に、家賃の低下が重なり、ビルの収益力が落ち込むことは避けられない。

 

そのため、これまで急騰してきた3大都市や札幌・仙台・広島・福岡などの地方中枢都市、さらに、京都市・金沢市などの一等地、商業地価の調整は、早晩、本格化していく。

次ページ急騰していた商業地価だが…恐ろしい「転換期」
アフターコロナ時代の不動産の公式

アフターコロナ時代の不動産の公式

幸田 昌則

日本経済新聞社

新型コロナの感染拡大で、不動産市況も大変化。 アベノミクスによる異次元の金融緩和によって演出された不動産バブルは、すでにピークを過ぎていたものの、2020年の新型コロナウィルスの感染拡大により、まったく違った局面…

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録
会員向けセミナーの一覧