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コロナ禍の不況において「資金バブル」が生まれ、格差社会は広まる一方だ。余った金を不動産投資に使う富裕層が多い背景について、不動産市況アナリストの幸田昌則氏が解説する。 ※本連載は、書籍『アフターコロナ時代の不動産の公式』(日本経済新聞出版)より一部を抜粋・再編集したものです。

景気悪化・失業者増加のなかでも「金余り」のワケ

日本銀行が発表した2020年4〜6月期の資金循環統計によると、6月末時点で「家計」が持つ現預金の残高は、前年同月比で4%増の1031兆円であった。増加率、残高共に、2005年以降で最高となったという。新型コロナ感染拡大の影響で、個人の消費が抑制され、家計の支出が少なくなったと推察される。

 

政府による国民1人あたり10万円の特別定額給付金の影響もあった。この給付金を生活費に充てなくて済む人は、そのまま口座に残したままにしているということである。

 

身近な人たちに聞いてみても、外出自粛要請が発令されて以降、旅行も外食も止め、衣服の購入もせず、化粧する回数も減り、各種のイベントの参加も見送ることを余儀なくされて、財布からお札が出ていくことが少なくなったという。その結果、生活に困らない所得に余裕のある人は、ますます手元資金が増えている。

 

このような現象は、米国でも見られるという。しかし足元の景気は悪化し、失業者は増加していて、世帯間・個人間の格差は急速に拡大している可能性が高いと考えられる。

 

さてコロナ褐で、日本だけでなく世界中で金融緩和政策が採られていて、当分の間、続きそうである。同時に、ゼロ金利政策も2〜3年間は続けられることを余儀なくされる経済状況に陥っているようだ(私は、経済・金融の専門家ではないので、あくまで私見として承知して欲しい)。

 

現在のところ、ジャブジャブの「金余り」の状態であるが、この状態は、そう簡単には崩れそうにもないと思われる。現在の金余りが、景気後退の局面にあるにもかかわらず、日本も米国も、株式市場を下支え、上昇させていると考えられる。

 

また、「金」も、経済の先行き不安から買われ、価格が急上昇してきたが、いずれも「金余り」のなせる業と言える。金余りによる「資産バブル」の状況が、コロナ禍で生まれており、危ない、脆いとも思われる現象が続いている。

 

この世界的な金余りと、歴史的な超低金利という金融環境もあって、不動産にも資金が流入している。日本の賃貸オフィス市況の先行きに暗雲が垂れ込め始めていることを考慮することなく、今でも、海外から東京都心の大型オフィス取得に関する情報は少なくない。金余りの運用先が他にないという背景があると推察される。

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アフターコロナ時代の不動産の公式

アフターコロナ時代の不動産の公式

幸田 昌則

日本経済新聞社

新型コロナの感染拡大で、不動産市況も大変化。 アベノミクスによる異次元の金融緩和によって演出された不動産バブルは、すでにピークを過ぎていたものの、2020年の新型コロナウィルスの感染拡大により、まったく違った局面…

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