保証人が抗いまくれる「催告・検索の抗弁権」って?
4 保証契約の付従性
保証契約は、主たる債務、つまり大元の借金があることを前提としています。そのため、主たる債務がない場合には、保証契約から生じる債務、すなわち保証債務がなくなります。
これは、保証債務の「付従性」(ふじゅうせい)と呼ばれます。「付き従う性質」と読むとおり、主たる債務に何かが起きたときに、保証債務もそれに付き従います。たとえば、主たる債務が消滅した場合は保証債務が消滅します。そもそもない場合はもちろん、途中から債務がなくなった場合も同様です。
主債務が存在するならば保証契約は残り続けるので、主債務者がもし死亡しても、その相続人が地位を承継する限り、主債務も保証契約も残ることとなります。
つまり本件の場合は、Xが死亡していたとしても、兄Bの保証人としての責任は残るのです。
5 保証契約の補充性と連帯保証
また保証人は、主たる債務者が支払いをできない場合にはじめて責任を果たさなくてはならなくなる「補充性」(ほじゅうせい)という性質があります。
この補充性という性質から、「先にAに金を請求してくれ(主たる債務者へのお金の請求)」といった内容の催告の抗弁権と、「Aに強制執行でも何でもして、それでも無理だったらこっちに請求してよ(主たる債務者の財産に執行をしてから請求)」といった内容の検索の抗弁権が導かれます(民法452条、453条)。
そのため、債権者が裁判で請求してきても、保証人は「保証人に請求するのはやることをやってからでお願いします」という催告・検索の抗弁権を主張することができます。
これでは保証契約を締結していても、債権の回収が難しくなるのは当然のことです。そこで、実際には「連帯保証」という契約を締結することがほとんどです。この連帯保証である旨を契約書に記載しておくと、補充性がなくなり、催告・検索の抗弁権を主張されることがなくなります(民法454条)。
6 まとめ
お金の貸し借りは、つねに危険が伴います。
本件のように、詐欺同然の手法で友人や交際者からお金を借りる人が世の中にはたくさんいます。良く言われていることですが、お金を貸す際は返ってこないもの、という覚悟を持つべきでしょう。また貸す場合には、返す能力のある連帯保証人等をきっちりと設定しておくべきです。