(画像はイメージです/PIXTA)

「すべての財産は兄に相続させる」との遺言を受け、遺留分の請求を決意した妹。しかし兄は「妹は生前の父に土地を借りて自宅を建てているため、これまでの土地の賃貸料を遺留分から引くべき」だと主張します。妹が土地を借りた事実は、兄のいう通り「特別受益」となって遺留分の減額要因となるのでしょうか? 長年にわたり相続案件を幅広く扱ってきた、高島総合法律事務所の代表弁護士、高島秀行氏が解説します。

特別受益の加算が免除される「持ち戻しの免除」とは?

持ち戻しの免除は、遺言などの文書でする場合も認められますが、判例では、文書で持ち戻し免除をしていなくても、いろいろな事情から、被相続人は持ち戻しを免除したと認める「黙示の持ち戻しの免除」が認められています。

 

例えば、体に障害がある子に将来の生活のために生前贈与をしていた場合には、持ち戻しを免除するという遺言等がなくても持ち戻し免除が認められています。

 

今回のケースでも、AさんがY子さんに土地を無償で使用する権利を認めたのは、その上にY子さんの建物を建てて、その建物にAさん自身も住んで、Y子さんに生活の面倒を見てもらうことが目的で、Y子さんにのみメリットがあるのでなく、Aさんにもメリットがあります。

 

そう考えると、そもそも特別受益ではないか、仮に特別受益と認められたとしても、持ち戻しが免除されていると考えられます。

 

したがって、遺留分の計算からは、土地の使用借権(1000万円)については除外して考えるということになります。

 

よって、正解は、③になります。

 

持ち戻しの免除が認められないと、遺留分は特別受益である使用借権も含めて2500万円なので1500万円しか請求できませんが、持ち戻しの免除が認められると、使用借権が認められた上に、2250万円の請求ができ、3250万円取得することができ、本来よりも750万円得をすることとなります。

 

今回のケースも筆者が担当した事件を元に作成したものです。金額の詳細は違いますが、実際のケースでも、持ち戻しの免除を主張し認められたことにより、依頼者はかなり得をすることができました。

 

 

高島 秀行

高島総合法律事務所

代表弁護士

 

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