NFTに関する法的考察~アート、ゲーム、スポーツを題材に~ (※写真はイメージです/PIXTA)

本記事は、TMI総合法律事務所のウェブサイトに掲載された記事『NFTに関する法的考察~アート、ゲーム、スポーツを題材に~』(2021年5月27日)を転載したものです。※本記事は法的助言を目的とするものではなく、個別の案件については当該案件の個別の状況に応じ、日本法または現地法弁護士の適切な助言を求めて頂く必要があります。また、本稿に記載の見解は執筆担当者の個人的見解であり、TMI総合法律事務所または当事務所のクライアントの見解ではありません。

CONTENTS 01 はじめに

近時、高額の発行事例が出ていることなどから急速に注目が集まっているNFTですが、法的な観点からの権利関係等が不明確と思われるNFTも見受けられます。他方、ブロックチェーン技術を用いることでこれまでにない魅力や付加価値を提供できる新しいサービス・商品という面も認められます。そこで、以下では、NFTについての一般的・基本的な日本法上の法的位置づけについて触れた後、現時点で発行事例が多く存在しているアート、ゲーム、スポーツの各分野のNFTについてそれぞれの方分野の観点からの分析・検討をしてみたいと思います。

CONTENTS 02 NFTとは

1.NFTとは 

 

NFTとは、Non-Fungible Tokenの略称をいい、直訳すれば「Non-Fungible=代替不可能な、代替性のない」「Token=象徴,証拠、標章、真正性(権威、権利、特権など)を示すもの」を意味します。実際には、ブロックチェーン上で発行されるデジタルトークン(デジタル権利証と言った方が分かりやすいかもしれません)であって、ビットコイン等の暗号資産とは異なり、非代替的なもの(この世に1つしかない固有のものや、少数限定のものなど)を指します。そして、そのNFTを利用して、この世に1つしかないデジタルアートのデータや、少数限定のゲームアイテムやトレーディングカードが販売され、近時特に極めて高額な取引価格がつく事例も発生していることから急速に注目を集めているものです。

 

以前は、デジタルデータは、容易に複製や改ざんがなされ得るものであり、かつ、その場合いずれのデータがオリジナルのものであるのか判別不能となってしまうため、デジタルデータに唯一性や固有の価値を認めにくい面がありましたが、ブロックチェーン技術により、あるデジタルデータの由来や移転経緯が低コストかつ非中央集権的・改ざん不可能な形で担保され得ることとなり、デジタルデータにも固有性・稀少性を認めることが可能となったため、そのようなブロックチェーン上のデータ(デジタルトークン)の特長を活かして様々なNFTが販売されたり二次売買されだしています。

 

2.NFTの日本法上の取扱い 

 

まず、前提として、ビットコインなどの「暗号資産」(従前の「仮想通貨」が法改正により「暗号資産」へと法律上の名称が変更されました)は、資金決済に関する法律(以下「資金決済法」といいます)によって規律されています。では、ビットコインと同じくブロックチェーン上で発行されるデジタルトークンであるNFTは資金決済法上の「暗号資産」に該当しないのでしょうか(NFTが資金決済法上の「暗号資産」に該当するとなれば、NFTを発行することが「暗号資産交換業」に該当してしまう可能性が高いことになります)。また、NFTを発行したり売買したりすることは資金決済法以外の法律によって何らか規制されることはないのでしょうか。

 

この点、一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会が策定・公表している「NFTビジネスに関するガイドライン」においては、以下のとおり整理されています。

 

出典:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会「NFTビジネスに関するガイドライン」5頁「(図1)法規制に係る検討フローチャート」より
出典:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会「NFTビジネスに関するガイドライン」
5頁「(図1)法規制に係る検討フローチャート」より

 

上記のとおり、NFTの保有者に対して「利益の分配」と評価される金銭等の交付がなされる場合には、金融商品取引法上の「有価証券」に該当する可能性が高いと考えられます。

 

次に、NFTが決済手段等の経済的機能を有している場合には、資金決済法上の「暗号資産」や「前払式支払手段」に該当する可能性がありますし、さらに、為替取引に該当する場合には銀行法上の「銀行業」や資金決済法上の「資金移動業」に該当する可能性もあります(なお、「為替取引」については法律上の定義は規定されておらず、判例等において、「『為替取引を行うこと』とは、顧客から、隔地者間で直接現金を輸送せずに資金を移動する仕組みを利用して資金を移動することを内容とする依頼を受けて、これを引き受けること、又はこれを引き受けて遂行することをいう」(最高裁平成13年3月12日決定)などとされています)。

 

特に、「暗号資産」該当性については、ブロックチェーンに記録されたトレーディングカードやゲーム内アイテム等は、基本的には決済手段等の経済的機能を有していないと考えられることから、暗号資産には該当しないと考えられる旨の見解も示されております(金融庁2019年9月3日付「「事務ガイドライン(第三分冊:⾦融会社関係)」の⼀部改正(案)に対するパブリックコメントの結果について」の別紙1「コメントの概要及びコメントに対する⾦融庁の考え⽅」No.4)。

 

しかし、この「決済段等の経済的機能を有していない」といえるのか否かは、当該トークンの発行数量等の条件に加えて、実際に当該トークンがどのように利用されているのかという社会的事実にも左右されると考えられ、例えば、発行当初は決済手段等の経済的機能を有していなかったものの、時間の経過とともに発行数量が増加したり、実際の利用のされ方が変化するといった事情によって事後的に決済手段等の経済的機能を有するに至ったと評価される可能性もあり得ますので、特に注意が必要と考えられます。

 

以上から、「利益の分配」と評価される金銭等の交付がなされることがなく、かつ、決済手段等の経済的機能を有していないNFTについては、日本法上は、現状では金融商品取引法や資金決済法等の金融規制や業規制を受けないものとして販売等されているものと考えられます。

 

TMI総合法律事務所 パートナー弁護士

【経歴】
1991年 3月 慶應義塾大学法学部法律学科卒業
1993年 4月 最高裁判所司法研修所入所
1995年 4月 東京弁護士会登録
       TMI総合法律事務所勤務
2001年 6月 カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)ロースクール卒業(LL.M.)
2001年 9月 アラバマ州のウォルストン・ウェルズ・アンダーソン・アンド・ベインズ法律事務所勤務
2002年 3月 ニュージャージー州のエーザイ・インク法務部研修
2002年 6月 ニューヨーク州弁護士資格取得
2002年 9月 TMI総合法律事務所復帰
2003年 1月 パートナー就任
2003年 4月 中央大学法学部兼任講師(エンターテイメント法)(〜2007年3月)
2014年 4月 慶應義塾大学法科大学院非常勤講師(著作権法)
2015年 10月 公益財団法人全日本スキー連盟監事

【取扱分野】
知財争訟/著作権/特許/商標/意匠/商事関連争訟/商事関連争訟/ブランド/情報・通信・メディア・IT/エンタテインメント・スポーツ/国際訴訟・仲裁・調停・ADR/カルテル・談合/国際カルテル/私的独占・不公正な取引方法

【登録・所属】
東京弁護士会(1995)/ニューヨーク州(2002) /特定非営利活動法人エンターテインメント・ロイヤーズ・ネットワーク /情報ネットワーク法学会

【論文・著書・セミナー】
2021年4月 論文 「Telecoms and Media」
2021年3月 論文 「Chambers GLOBAL PRACTICE GUIDES - Sports Law 2021」
2020年10月 著書 『Sports Law 2021』
2020年7月 著書 『IT・インターネットの法律相談〔改訂版〕』

【その他の論文・著書】
「『着うた』ビジネスにみる著作権と独占禁止法の交錯」(2005年2月、ビジネス法務、論文)、『ITの法律相談』(2004年、青林書院、共著、書籍)、「ここまで必要!企業における営業秘密の情報管理」(2004年3月、ビジネス法務、共著、論文)、『著作権の法律相談』(2002年、青林書院、共著、書籍)

著者紹介

TMI総合法律事務所 パートナー弁護士

【経歴】
1975年 生
1994年 3月 東海高等学校卒業
1998年 3月 早稲田大学法学部卒業
1998年 4月 最高裁判所司法研修所入所
2000年 4月 東京弁護士会登録
       TMI総合法律事務所勤務
2006年 1月 パートナー就任
2008年 9月 韓国の金・張法律事務所勤務
2009年 1月 ロンドンのシモンズ・アンド・シモンズ法律事務所勤務
2009年 10月 TMI総合法律事務所復帰

【取扱分野】
ストラクチャードファイナンス/プロジェクトファイナンス/コーポレートファイナンス/Fintech/PropTech(不動産テック)/不動産投資/不動産開発/REIT/インフラ投資法人/M&A/太陽光発電その他再生可能エネルギー

【登録・所属】
東京弁護士会(2000)/マンション再生協会/流動化・証券化協議会 /信託法学会/(一社)日本セキュリティトークン協会 理事、(一社)日本クラウドファンディング協会 理事、(一社)不動産特定共同事業者協議会 アドバイザー、(一社)不動産テック協会 アドバイザー、(一社)LIVING TECH協会 監事、(一社)不動産情報共有推進協議会 監事

【論文・著書・セミナー】
2021年5月25日 論文「不動産CFの注意点 事業者の信用力や目利き力を要確認」
2021年2月17日 セミナー『不動産ファンド2.0 〜不動産クラウドファンディングを中心に最新の実務と法改正を踏まえて〜』
2021年1月12日 セミナー『不動産ファンドビジネス・スキームの最新動向~最新の実務と法改正等を踏まえて~』
2020年12月16日 セミナー『[不動産クラウドファンディング][セキュリティトークン]の法務と事業化実務講座』
2020年11月27日 セミナー『不動産DXを見据えた新しい商品開発とビジネスモデル』
2020年9月23日 セミナー『「不動産ファンドビジネスのための基本的なスキームの解説」』
2020年8月4日 著書 『不動産特定共同事業法に基づくクラウドファンディング資料集』
2020年6月25日 セミナー 『不動産クラウドファンディングと不動産STOの最新動向』

著者紹介

TMI総合法律事務所 パートナー弁護士

【経歴】
1981年 生
2000年 3月 東京学芸大学付属高等学校卒業
2005年 3月 東京大学法学部第一類卒業
2007年 3月 東京大学法科大学院修了
2007年 11月 最高裁判所司法研修所入所
2008年 12月 第二東京弁護士会登録
2009年 1月 TMI総合法律事務所勤務
2016年 5月 カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)ロースクール卒業(LL.M., Specialization in Entertainment, Media, and Intellectual Property Law)
2016年 10月 ロサンゼルスのクイン・エマニュエル・アークハート・サリバン法律事務所勤務
2017年 3月 ロサンゼルスのAmazon Studios LLC勤務
2017年 7月 TMI総合法律事務所復帰
2018年 2月 公益社団法人日本プロサッカーリーグ法務委員就任
2019年 1月 パートナー就任

【取扱分野】
情報・通信・メディア・IT/エンタテインメント・スポーツ/知財争訟/広報法務/リスクマネジメント/不正調査/商事関連争訟/著作権/特許/商標/意匠/私的独占・不公正な取引方法/下請法/景品表示法

【登録・所属】
第二東京弁護士会(2008)/日本スポーツ法学会

【論文・著書・セミナー】
2021年2月17日 論文「Chambers GLOBAL PRACTICE GUIDES - Copyright 2021」
2020年10月8日 著書『Sports Law 2021』

【その他の論文・著書】
2016年9月 著書『知的財産判例総覧2014 Ⅱ』青林書院

著者紹介

TMI総合法律事務所 弁護士

【経歴】
1984年 生
2003年 3月 早稲田大学高等学院卒業
2007年 3月 早稲田大学法学部卒業
2010年 3月 早稲田大学法科大学院修了
2010年 11月 最高裁判所司法研修所入所
2011年 12月 第二東京弁護士会登録
2012年 1月 TMI総合法律事務所勤務
2018年 5月 カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)ロースクール卒業(LL.M.)
2018年 8月 在ロサンゼルス日系企業研修
2019年 7月 スウェーデンのVingeにて研修
2020年 10月 カリフォルニア州弁護士資格取得

【取扱分野】
著作権/商標/意匠/情報・通信・メディア・IT/エンタテインメント・スポーツ/知財争訟/破産/特別清算/下請法/景品表示法/M&A/民事再生/会社更生/事業再生ADR

【登録・所属】
第二東京弁護士会(2011)

【論文・著書・セミナー】
2021年6月30日 セミナー 『「ビジネスと人権」人権侵害リスクとリスクマネジメント〜人権制裁等最新動向と人権デューデリジェンス〜』
2021年4月12日 論文「eスポーツを巡るリーガル・トピック 第10回(完) eスポーツに係るその他の問題(eスポーツとSDGs等)」
2021年4月1日 論文「eスポーツを巡るリーガル・トピック 第9回 eスポーツにおける契約上の問題点(2)――eスポーツにおける選手契約」
2021年3月29日 論文「eスポーツを巡るリーガル・トピック 第8回 eスポーツにおける契約上の問題点(1)――大会参加契約・スポンサー契約・未成年との契約」
2021年3月15日 論文「eスポーツを巡るリーガル・トピック 第7回 eスポーツとフェアプレイ(3)――チート行為と法律――その他の法令や利用規約を巡る論点」
2021年3月11日 論文「eスポーツを巡るリーガル・トピック 第6回 eスポーツとフェアプレイ(2)――チート行為と法律――著作権を中心に」
2021年3月8日 論文「eスポーツを巡るリーガル・トピック 第5回 eスポーツとフェアプレイ(1)――ドーピング等」
2021年2月25日 論文「eスポーツを巡るリーガル・トピック 第4回 eスポーツと著作権(3)――eスポーツの選手と著作権」
2021年2月22日 論文「eスポーツを巡るリーガル・トピック 第3回 eスポーツと著作権(2)――eスポーツの周辺ビジネスとゲームの著作権」
2021年2月18日 論文「eスポーツを巡るリーガル・トピック 第2回 eスポーツと著作権(1)――ゲームの著作権性とプレイ動画」
2021年2月17日 論文「Chambers GLOBAL PRACTICE GUIDES - Copyright 2021」
2021年2月15日 論文「eスポーツを巡るリーガル・トピック 第1回 eスポーツを巡るリーガル・トピックの検討の前提として」
2020年11月9日 セミナー『グローバル規制・実務の最新動向を踏まえた「ビジネスと人権」と法務の役割』
2020年11月1日 著書『THE SPORTS LAW REVIEW – 6th Edition』
2020年8月6日 セミナー『eスポーツビジネス展開に関わる法的問題点と対策~eスポーツ×法律 ゲーム×スポーツ~』
2020年7月1日 著書 『IT・インターネットの法律相談〔改訂版〕』
2020年1月31日 セミナー『SDGs・ESGと法務 ~SDGs・ESGの基礎から、トレンド、今後、企業のリーガルに求められるポイントについて解説~』

【その他の取扱分野】
ビジネスと人権

『その他の著書』
2016年9月 『知的財産判例総覧2014 Ⅱ』(著書、青林書院)

著者紹介

連載TMI総合法律事務所 ニューズレター

○執筆者プロフィールページ
   五十嵐 敦
   成本 治男
   金子 剛大
   長島 匡克

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