事故か、徘徊か…「超高齢化社会日本」の恐ろしい実情
この後、住んでいた公営住宅にも、美子さんはずっと戻っていません。こちらの方も家賃を滞納している状態とのことでした。美子さんはいったいどこに行ってしまったのでしょう。
考えられるのは、何らかの事故に遭ったけれど身元の分かるものを携帯していなかったのか、認知症等で徘徊して保護されているのか。どちらにしても美子さんは、ある日忽然と姿を消しました。
実は全国の高齢者の施設では、認知症になった方がたくさん保護されています。名前や連絡先等も分からないため、対応のしようもなく、大きな社会問題となっています。
個人情報保護法が施行され、個人の情報が得にくくなっていることも、この問題に拍車をかけています。個人情報の保護にはもちろん利点もありますが、こと高齢者のサポートには逆効果になっている側面もあります。兄弟姉妹の数も減り、親族関係が希薄になっている現代は、手のうちようがない案件が爆発的に増えています。
近い将来に超高齢化社会に突入する日本。家族や親族が高齢者の世話をしたり、看取ったりする時代ではなくなりました。国や行政がある一定の権限をもって介入・サポートするようにならなければ、このような問題は激増していくばかりだと思います。
家族がいてもいなくても、人は誰にも迷惑をかけずに万全の状態で亡くなることは難しいのが現実です。だからこそ地域が、社会が関わらなければならない問題なのです。
※本記事で紹介されている事例はすべて、個人が特定されないよう変更を加えており、名前は仮名となっています。
太田垣 章子
OAG司法書士法人代表 司法書士