米国が「大きな政府」を必然とする3つの要因
バイデン政権が登場し、大きな政府への流れが決定的になった。この急旋回は、コロナが原因となって起きたものではなく、コロナは単にきっかけに過ぎない。
底流で進行していたレジーム転換が一気に表面化したものと考えられるので、この流れは不可逆的なものであろう。賢い政府が今ほど求められる時はない。
大きな政府を必然とする3つの要因がある。
第一は米中覇権争いである。国家資源を総動員する中国の専制主義に対抗するには、米国も政府の強力なイニシャティブを確立しなければならない。
第二に経済学と経済政策が直面している課題の大転換がある。これまでの新古典派的経済政策を正当化してきた供給力不足がインフレをもたらすという命題が後退し、代わって需要不足がデフレをもたらす命題が前面に現れたという現実がある。
レーガン・サッチャー時代以降支配的であった新自由主義(ネオリベラリズム)的常識、小さな政府信仰つまり財政赤字回避、規制緩和と産業や市場への国の介入回避、等の見方はあっさり捨て去られつつある。代わって大きな政府を柱とする、いわば「新ケインズ主義」が前面に出てきた。
第三にグローバルなハイテク産業と技術での競争において、政府の支援は決定的に重要になっている。古典的自由貿易は役に立たない建前と化し、WTOも形骸化が著しい。
その理由は、半導体などのハイテク産業は初期投資と過去の履歴効果が決定的に重要な収穫逓増産業であり、国家による産業政策、通商管理がその国の企業競争力に致命的重要性を持っていることである。
大きな政府の時代の到来に投資家はどう対処するべきか、3つの投資への含意を指摘したい。
第一は大きな政府であるが、バイデン政権のそれはあくまでも社会主義ではなく資本主義であるということ、最後は資本の合理性(資本リターンと資本コスト)が趨勢を決めることに変わりはない。政府の支援はあくまでも企業のボトムラインにポジティブに働きかけることで結果をもたらそうということである。
第二に現代世界経済の基礎的インバランス、貯蓄余剰と需要不足は解消に向かい、物価上昇率の高まりと長期金利の上昇がもたらされ、1980年代から続いた金利低下とドル安の時代は終焉していくだろう。
第三に米国株価の上昇は続くが、年率5~10%程度の抑制的なものとなるだろう。ケインズ政策の導入、長期金利の底入れは第二次大戦直後の1949年ごろとよく似た環境である。米国株式はケインズ政策が導入された1950~60年代に大きく上昇した。
ただ株式バリュエーションは当時とは大きく異なる。1949年W・バフェットの師匠であるベンジャミン・グレアムが『賢明なる投資家』を著わし、株式が絶対的割安水準にあると述べた時(PER7倍、益回り15%、長期金利2.5%)とは大きく異なる。米国株式は上昇基調ながら抑制的だろう。
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