恒大経営危機の顛末
恒大集団経営危機、事実上の破たんへ
中国の不動産最大手企業、恒大集団が経営危機に陥っている。6月末の時点で有利子負債は5700億人民元、日本円で約9兆7000億円(890億ドルの借り入れと債券発行による債務)である。
これにサプライヤーに負っている買掛金、住宅購入者の頭金・前払い金などを加えれば負債総額は1兆9600億人民元、日本円で33兆円規模に上るとみられる。
ここ数年来の中国政府による不動産規制強化が引き金になり、不動産事業の採算悪化、資金繰り困難化、建設中の物件の工事停止、取引先への支払い停滞、購入したマンションの完成の見通しが立たず入居できない、等の混乱が起きている。
恒大集団が破たんした場合、まず従業員や取引先の企業に大きな影響が出る。また、恒大グループが資金調達を急ぎ保有する物件を投げ売りすれば、不動産価格の下落を通じて他の業者にも打撃が及ぶ。また金融機関、投資家の損失発生が連鎖的金融困難を引き起こす可能性もある。
恒大集団の株価は昨年ピーク時(2020年10月8日)20.2HKドルであったが今年9月20日には2.11HKドルへと10分の1まで急落、政府支援の期待が高まり9月23日には2.8HKドルに上昇したものの、9月24日には2.36HKドルへと再下落した。
社債も額面の3割以下まで下落しており、破たんを織り込んでいる。利払い停止と債務不履行が懸念される。
恒大集団は人民元建ての利払いは表明したが、ドル建ての利払いは遅延している模様である。当局がデフォルト回避を指示したと報じられているが、予断は許されない。
危機の主因は政策の変化、不動産融資規制が直撃
こうした困難の主因は、恒大集団の超積極・債務依存という経営の問題もあるが、数年来のバブル対応の金融規制強化にある。2020年、習政権は不動産業融資の総量規制(銀行融資の40%以下)、二件目以上の住宅ローンの厳格化、マンション価格の統制、等を打ち出した。
特に不動産融資規制は、融資適格条件が、
1.資産負債比率70%超
2.純負債資本倍率100%超
3.短期負債を上回る現金を保有していること
と具体的であり即効性があった。開発融資は今年6月は2.8%増と過去最低まで低下し、住宅販売は8月には前年比19.7%減少している。
限度を超えた住宅価格高騰
確かに中国の不動産バブルは許容限度を超えている。北京、上海、広州など主要都市の住宅価格は5年前に比べて50から60%上昇し、各都市の平均年収に対してはほぼ50倍に達した。
10倍前後の東京、ニューヨーク、ロンドンのほぼ5倍であり、若者が生涯かけても家を持てないことが当たり前になった。この国民的不満を当局は容認できなくなったのである。
また習近平政権は鄧小平路線、つまり市場原理を働かせ格差を容認する「先富論」を捨て、富裕層に対して低所得層への寄付を求める「共同富裕」路線へと舵を切った。不動産規制はそうした政策転換の重要な柱だったのである。