他人が自分の財産を狙っている…父が抱いた「妄想」
Aさんが6億円の遺産を残して亡くなりました。
Aさんの相続人は、お子さんであるXさんとY子さんです。Aさんは、「遺産を全部Y子さんに相続させる」という遺言を書いていました。
しかし、Aさんは、その後認知症がひどくなり、成年後見人が付いていました。
Aさんが亡くなると、「これまで書いた遺言書はすべて取り消す」という公正証書遺言書が出てきました。公正証書遺言には医師2人が立ち会い、Aさんが判断能力がある旨の記載がなされていました。
Y子さんの記憶では遺言を書いた当時Aさんは日常会話はできたけれども、他人が自分の財産を狙っているという妄想を抱いていて、とても判断能力があったとは思えませんでした。
Y子さんはどうしたらよいでしょうか。
次の①~③から選んでください。
①Aさんには成年後見人が付いているので遺言を書くことはできず、すべての遺言を取り消すという遺言は無効となる。
②Aさんは成年後見人が付いていても医師2人の立会いがあり、判断能力があると診断されているので、すべての遺言を取り消すという遺言は有効となる。
③遺言作成に立ち会った医師2人がAさんに判断能力があるという診断をしていても、判断能力がなかったという証拠があれば、すべての遺言を取り消すという遺言は無効となる。
取り消す遺言が有効なら「法定相続分」で遺産を分割
『「全部お前にやる」といったのに…父が残した2通目の遺言書』でもご説明しましたが、一度遺言を書いても、遺言は何度でも書き直すことができます。
今回のケースでいうと、最初の遺言は、「Y子さんに全部相続させる」という遺言ですから、Y子さんは遺産全部(6億円)を相続できることとなります。
ただし、Xさんには遺留分(4分の1)がありますので、Xさんが遺留分侵害請求権を行使すると、Y子さん4億5000万円、Xさん1億5000万円という相続となります。
しかし、あとから書いた、「これまで書いた遺言書はすべて取り消す」という遺言が有効だとすると、前の遺言書は取り消され、遺言がないこととなってしまいます。
すると、XさんとY子さんは、法定相続分の2分の1に従い、遺産を3億円ずつ分けることとなります。
あとから書いた遺言が有効か無効かで、Y子さんの相続する金額がXさんの法定相続分2分の1(3億円)と遺留分4分の1(1億5000万円)との差額分である1億5000万円違ってくることとなります。
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