(画像はイメージです/PIXTA)

遺言書が有効か否かは、遺言書の作成時点に「判断能力」がどの程度あったかにより決定されます。遺言者が認知症であっても遺言を残すこと自体は可能ですが、医師2人の立ち合いが必要となるなど、細かな取り決めが存在するため注意が必要です。長年にわたり相続案件を幅広く扱ってきた、高島総合法律事務所の代表弁護士、高島秀行氏が解説します。

他人が自分の財産を狙っている…父が抱いた「妄想」

Aさんが6億円の遺産を残して亡くなりました。

 

Aさんの相続人は、お子さんであるXさんとY子さんです。Aさんは、「遺産を全部Y子さんに相続させる」という遺言を書いていました。

 

しかし、Aさんは、その後認知症がひどくなり、成年後見人が付いていました。

 

Aさんが亡くなると、「これまで書いた遺言書はすべて取り消す」という公正証書遺言書が出てきました。公正証書遺言には医師2人が立ち会い、Aさんが判断能力がある旨の記載がなされていました。

 

Y子さんの記憶では遺言を書いた当時Aさんは日常会話はできたけれども、他人が自分の財産を狙っているという妄想を抱いていて、とても判断能力があったとは思えませんでした。

 

Y子さんはどうしたらよいでしょうか。

 

次の①~③から選んでください。

 

①Aさんには成年後見人が付いているので遺言を書くことはできず、すべての遺言を取り消すという遺言は無効となる。

 

②Aさんは成年後見人が付いていても医師2人の立会いがあり、判断能力があると診断されているので、すべての遺言を取り消すという遺言は有効となる。

 

③遺言作成に立ち会った医師2人がAさんに判断能力があるという診断をしていても、判断能力がなかったという証拠があれば、すべての遺言を取り消すという遺言は無効となる。

取り消す遺言が有効なら「法定相続分」で遺産を分割

『「全部お前にやる」といったのに…父が残した2通目の遺言書』でもご説明しましたが、一度遺言を書いても、遺言は何度でも書き直すことができます。

 

今回のケースでいうと、最初の遺言は、「Y子さんに全部相続させる」という遺言ですから、Y子さんは遺産全部(6億円)を相続できることとなります。

 

ただし、Xさんには遺留分(4分の1)がありますので、Xさんが遺留分侵害請求権を行使すると、Y子さん4億5000万円、Xさん1億5000万円という相続となります。

 

しかし、あとから書いた、「これまで書いた遺言書はすべて取り消す」という遺言が有効だとすると、前の遺言書は取り消され、遺言がないこととなってしまいます。

 

すると、XさんとY子さんは、法定相続分の2分の1に従い、遺産を3億円ずつ分けることとなります。

 

あとから書いた遺言が有効か無効かで、Y子さんの相続する金額がXさんの法定相続分2分の1(3億円)と遺留分4分の1(1億5000万円)との差額分である1億5000万円違ってくることとなります。

 

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