相続人にとっての遺言書の重要性は周知されつつありますが「書いてもらえば安心」といい切れないのが難しいところです。相続発生後、内容の異なる複数の遺言書が出てくるケースは少なくありません。本記事では、長年にわたって相続案件を幅広く扱ってきた高島総合法律事務所の代表弁護士、高島秀行氏が解説します。

遺言書がなければ、法定相続分で分けるしかないが…

「相続を有利にするには遺言書を書いてもらうことだ」と聞いたことがあるかもしれません。そのこと自体は正解です。

 

遺言書が書かれてしまうと、基本的に遺言書のとおりに遺産は相続されることとなります。ただし、他の相続人の遺留分を侵害しているときは、遺留分侵害請求により遺留分を取り戻されることにはなります。しかし、遺留分は法定相続分の2分の1で、遺言がない場合は他の相続人と法定相続分で分けなければなりませんから、遺言があった方が大分得だということとなります。

 

具体例で解説します。

 

Aさんの相続人は、XさんとY子さんの子ども2人です。

 

Aさんは、世田谷区の不動産(2億円)、株式(5000万円)、預貯金(5000万円)で3億円の遺産がありました。

 

遺言がない場合、Aさんの相続人は2人ですから、Xさん、Y子さんの相続分はそれぞれ2分の1で、Xさん、Y子さんはそれぞれ1億5000万円分の遺産を相続します。

 

これに対し、「Aさんの遺産を長男であるXさんにすべて相続させる」という遺言があった場合、Xさんは、遺産3億円をすべて相続することとなります。

 

ただし、先ほど説明したように、Y子さんは「法定相続分2分の1の2分の1」、即ち4分の1について、遺留分侵害請求権があります。

 

そこで、Y子さんが遺留分を請求すれば7500万円を支払ってもらうことができます。

 

遺言がない場合は1億5000万円ずつ相続するはずだったのに、遺言があるとXさんが2億25000万円、Y子さんが7500万円を相続することとなり、遺言を書いてもらったXさんが大分得したことがわかると思います。

 

(※画像はイメージです/PIXTA)
(※画像はイメージです/PIXTA)

 

注目のセミナー情報

【資産運用】5月8日(水)開催
米国株式投資に新たな選択肢
知られざる有望企業の発掘機会が多数存在
「USマイクロキャップ株式ファンド」の魅力

 

【国内不動産】5月16日(木)開催
東京23区×新築×RC造のデザイナーズマンションで
〈5.5%超の利回り・1億円超の売却益〉を実現
物件開発のプロが伝授する「土地選び」の極意

次ページ相続するつもりだった「2億円の不動産」が妹名義に!?

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録