(※写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、東海東京調査センターの中村貴司シニアストラテジスト(オルタナティブ投資戦略担当)への取材レポートです。今回は、「原油価格」が1バレル=70ドル台を突破した背景と今後の見通しについて見ていきます。

景気感応度が高い「原油価格」が堅調に推移

主要国中銀・政府による大規模な金融緩和や財政拡張に加え、世界経済の正常化の進展やインフレヘッジとしての買い需要などが後押しし、原油価格は2020年5月以降、堅調に推移している(図表1、週次ベース)

 

【図表1】WTI原油の価格推移(週次)

 

OECDの世界の景気先行指数と「ロイター・コアコモディティCRB指数(代表的な商品関連指数の一つでエネルギー関連が概ね4割を占める)」の推移を見ると、CRB指数の底打ち・上昇サイクルとOECD世界景気先行指数の底打ち・上昇サイクルは概ね一致している(図表2)

 

【図表2】CRB指数とOECD世界景気先行指数の推移(月次)

 

新型コロナワクチンの普及により、世界経済の持続的な伸びが期待できる局面にあるとの投資家の見方が、原油を含む商品の堅調なトレンドをもたらしているようだ。

WTI原油価格が「1バレル=70ドル台」を突破した背景

WTI原油先物(ニューヨーク・マーカンタイル取引所で取引されているウエスト・テキサス・インターミディエートという米国の原油先物商品)は2021年6月に入り、1バレル=70ドル台を回復するなど堅調な値動きとなっている。

 

原油価格の上昇の背景として、米長期金利が低位で安定するなか、ドライブシーズン(5月最終月曜日のメモリアルデーから9月最初の月曜日のレーバーデーまで)入りによるガソリン需要の拡大や、6月のOPECプラス(石油輸出国機構とロシアなど非加盟の主要産油国で構成)の会合で増産ペースを加速させなかった点(協調減産を7月まで段階的に縮小する既定方針を再確認)などが買い安心感をもたらしたと考える。

 

またイラン産原油の禁輸解除が遅れるとの観測なども原油の下値をサポートしたようだ。6月19日(現地時間)、イラン大統領選において反米の保守強硬派のライシ師が当選。米経済制裁の解除に向け強硬姿勢で臨む可能性が高く、イラン産原油の禁輸解除には時間がかかると見られる点は原油価格にプラスに働こう。

 

加えて、ESG(環境、社会、企業統治)の観点から石油などの化石燃料に対し、中長期的に設備投資を抑制しようとする流れがあり、生産・供給面からも原油価格の上昇期待につながっているものとみられる(一方、長期的な再生可能エネルギーの広がりは原油需要・価格の抑制要因になると見込まれる)。

 

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このレポートは、投資判断の参考となる情報の提供を目的としたもので、投資勧誘を目的としたものではありません。投資判断の最終決定は、お客様自身の判断でなさるようお願いいたします。このレポートは、信頼できると考えられる情報に基づいて作成されていますが、東海東京調査センターおよび東海東京証券は、その正確性及び完全性に関して責任を負うものではありません。なお、このレポートに記載された意見は、作成日における判断です。

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