日経平均株価は2021年2月に30,000円を一時突破しましたが、その後は上値が重い展開が続いています。本記事では、行動ファイナンス理論の「歪度(わいど)」という概念を取り入れ、複数の戦略を組み合わせて日本株の長期上昇トレンドに乗る方法を考えます。※本連載は、東海東京調査センターの中村貴司シニアストラテジスト(オルタナティブ投資戦略担当)への取材レポートです。
コロナショック以降の日経平均株価の推移と投資戦略
今回は、ヘッジファンドや年金運用などでも活用が広がる「行動ファイナンス理論(心理学を組み合わせた投資理論)」の切り口から、「ダウンサイドリスクの抑制を行いながら長期の日本株上昇に追随するための投資アイデア」を考えたい。
日本株(日経平均株価)は2021年2月に3万700円台をつけた後、バリュー株と比較し、値がさグロース株の上値が重く、短期の調整局面となっている。今後の日本株については、短中期の調整を挟みながらも長期の上昇トレンドは継続すると想定している。
その背景として、①新型コロナウイルスワクチンの普及により、世界経済の正常化とともに国内経済の正常化が進展することで企業業績の伸長がもたらされ、日本株の上昇基調を支えるとみる。
また、②今後、利益率や資本効率の向上など株主重視の姿勢が日本企業に浸透し、ROE(自己資本利益率)の改善につながることで長期的な株価上昇も期待される。
加えて、③中国や他のアジア諸国の高い経済成長を日本企業が積極的に取り込むことで、PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)などのバリュエーション水準の中長期的な切り上がりも見込まれる。こうした点を考慮に入れれば、日本株の長期ロング戦略は引き続き有効と考える。
とはいえ、2020年3月のコロナショックにより一時1万6000円台まで急落した日経平均株価が2021年に一時3万円台をつけるなどV字回復の動きとなっており、短期の高値警戒感が残ることもまた事実であろう。
ネット取引の浸透に加え、HFT(高速・高頻度取引)や機械的なクオンツ(数理・定量)運用などの広がりにより、人間の目にもとまらぬ一瞬の動きで株価急落が生じてしまうリスクは残るとみられる(逆に予想外に急騰するリスクも抱えていると言えよう)。
このような局面でのポートフォリオ戦略として、下値リスクを抑制しながら長期の上昇トレンドに追随するための代替手法の活用は一つの選択肢になりそうだ。
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東海東京調査センター
投資戦略部 シニアストラテジスト(オルタナティブ投資戦略担当)
山一證券、メリルリンチ日本証券、損保ジャパンアセット(現SOMPOアセット)などでの富裕層・法人営業に加え、年金基金、投資信託のアナリストやファンドマネージャーとして新興市場やオルタナティブを含む幅広い市場・商品の担当責任者を経て、2016年に東海東京調査センター入社。
現職では短中期の戦術的資産配分(タクティカル・アセットアロケーション)やオルタナティブ投資(ヘッジファンド・テクニカルやコモディティ戦略含む)の視点を踏まえたグローバルな日本株の市場分析等を行う。他の代替資産・戦略としてJリート投資戦略、ESG投資戦略、行動ファイナンス投資戦略などもカバーしている。
英国国立ウェールズ大学経営大学院MBA。アライアント国際大学・カリフォルニア臨床心理大学院米国臨床心理学修士号(MA)。慶應義塾大学商学部卒。国際公認投資アナリスト(CIIA)、日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)、国際テクニカルアナリスト連盟検定テクニカルアナリスト(MFTA)、CFP、英国王立勅許鑑定士(MRICS)、不動産証券化協会認定マスター、中小企業診断士。
日経CNBCなどのTV・メディアに出演。日経新聞、QUICK、ロイター、ブルームバーグ、時事通信、東洋経済オンライン、幻冬舎ゴールドオンラインなどでも執筆、コメントを行う。ヘッジファンド・テクニカルのキャリアとして世界のテクニカルアナリスト協会を束ねる国際テクニカルアナリスト連盟(IFTA)の理事などを歴任。早稲田大学ビジネスファイナンスセンターや同志社大学、青山学院大学等で講師を務める。
著書には投信営業に行動ファイナンスアプローチなどを活用した『会話で学ぶ!プロフェッショナルを目指す人の「投信営業」の教科書』(2021年)がある。
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