「タワーマンション」のこれから…天国と地獄
ふり返れば、銀座、日本橋を擁する中央区の人口は、戦後復興期には17万人を超えていました。その後、核家族化や、バブル経済の地価高騰に追い立てられるように流出が続き、1997年には7万人台に減りました。急激な人口減少を中央区は存亡の危機ととらえ、都心回帰の風を受けて、容積率緩和を主軸とする「居住誘導政策」を導入しました。
都心回帰は奏功し、中央区の人口は2019年6月には約16万5000人に増えています。マンション化率は80パーセントに達し、V字回復を遂げたわけですが、今後は少子化が進み、ふたたび児童が減るのは避けられません。校舎が余れば維持管理や統廃合の費用が増え、財政を圧迫します。小学校の新増設と、将来的な施設過剰は超高層タウンに共通の悩みです。
人口が回復した中央区は、ついに居住誘導政策の転換を打ち出しました。住宅開発への容積率緩和措置を廃止し、良質なホテルや商業施設の誘導に切り替えると表明したのです。江東区もまた、大規模マンションの「ファミリー物件」の数を実質的に抑える方針を出し、急な人口増に歯止めをかけようとしています。
このように超高層マンションが一般化するにつれて弊害が目に見えてきました。行き過ぎた開発を見直す動きは広がっています。神戸市は都心部の三宮、新神戸、元町、JR神戸駅周辺でタワーマンションの建設を規制する方針を固めました。
概して投資色の濃いタワーマンションは、常に多数の賃貸を抱え、上層階の億ション組と、下層階の住宅ローン組では価値観が違います。共同体の育み方次第で、先々、タワーマンションも持続可能な楽園とスラムに二極化するといわれます。
二極化の分かれ目は、管理組合の維持管理です。超高層の建築構造や、設備は極めて特殊で、物理的にも一般のマンションとは違った難しさが横たわっています。
山岡 淳一郎
ノンフィクション作家
東京富士大学客員教授
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