日本国債の買われ方と、バブル期の株式市場の類似点
こうして投資家が日本国債を購入すると、日本政府には国債発行によって多額の現金が入ってきますから、日本政府は資金繰りに困ることはありません。つまり、過去に発行された日本国債はなんの問題もなく償還されるわけです。
それを知っている投資家たちは、日本国債は安全だ、と考えて日本国債に投資するわけです。つまり、消去法的に買っているだけではなく、日本国債は安全だと考えて買っているという面もあるわけです。
これは突き詰めると「ほかの投資家が日本国債を買うから日本国債は安心だ。だから自分も買う」とすべての投資家が考えているから、その通りのことが起きる、というわけですね。
これは、バブル期の株式市場と似ています。株のバブルは「ほかの投資家が買うから株は値上がりするだろう。自分も買おう」とすべての投資家が考えるので、株価が本来あるべき価格より高くなる、というわけですが、日本国債もほかの投資家の買いを前提として各自が行動しているという点では、共通しているからです。
もっとも、日本国債の現状をバブルと呼ぶ人は少ないでしょうし、株のバブルと異なり、将来に問題を生じるというものでもありません。株価のバブルは永続しませんが、日本国債は値段が上がり続けているわけではないので、仮にバブルだとしても永続可能だからです。
国債の価格が暴落したとき、損するのはだれ?
問題は、いつの日か投資家たちが「やはり日本政府は破産するだろう。ほかの投資家たちも同じことを考えて、日本国債を売るだろう。だから自分も急いで売ろう」と考える日がやってくるかもしれない、ということです。
そうなれば、日本国債の価格は暴落し、国債を持っている投資家は大損を被るかもしれません。しかし、それは「投資家の損」であって、日本政府の損ではないので、日本政府が破産するわけではないのです。
日本国債が暴落したときになにが起きるのかは、とても興味深い問題なので、また別の機会に詳述することとしましょう。
今回は以上です。なお、本稿は筆者の個人的見解であり、筆者の所属する組織等々の見解ではありません。また、このシリーズはわかりやすさを最優先として書いていますので、細かい所について厳密にいえば不正確だ、という場合もあり得ます。ご理解いただければ幸いです。
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塚崎 公義
経済評論家
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