株式や債券などの伝統的な資産に金や原油、リートなどを組み合わせてリスク分散を図る馴染みの深い投資戦略。それに対して、ポートフォリオに占める各資産のリスクの割合を概ね均等になるように調整する投資戦略を「リスクパリティ戦略」といいます。詳しく見ていきましょう。※本連載は、東海東京調査センターの中村貴司シニアストラテジスト(オルタナティブ投資戦略担当)への取材レポートです。

リスクパリティ戦略…各資産のリスク割合を均等にする

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

今回は代替戦略の一つでクオンツ(数理・定量)的な視点で、ヘッジファンドでも活用されることが多い「リスクパリティ戦略」について見ていきたい。

 

リスクパリティ戦略とは、ポートフォリオに占める各資産のリスクの割合を概ね均等に配分させることで、資産全体のリスクを低減させようとする投資手法である。

 

日経平均VI(ボラティリティ・インデックス:予想変動率を指数化したもの)を例にリスクパリティ戦略を単純化して説明しよう。

 

日経平均VIは投資家に馴染みのある米VIX指数(恐怖指数)と同様、主に市場の不安心理の大きさをみる手掛かりに使われる(日経平均株価の値動きが先行き荒くなるとみる投資家が増えるとVIは上昇し、反対に膠着相場が続くとみられると低下する)。

 

リスクパリティ戦略では、VIが上昇した場合、(ボラティリティが相対的に高まった)リスク資産の株式のウェイトを減らして、安全資産としての債券にシフトする。逆に、VIが低下すれば、債券のウェイトを減らして株へシフトする。

 

これらのボラティリティ(正確には過去と予想をベースとした戦略に分かれる)に基づく機械的な投資行動は、業績やバリュエーションに関係なく、株式の買い需要(反対に売り需要)として働いてくる。

日経平均VIを活用した「ポートフォリオ戦略」

経験則では30が一つの目安(VIが30の場合は、1年後に日経平均がプラスマイナス30%変動する可能性が7割程度あることを意味する)とされ、30を上回る状況が続くと投資家は現物株の値下がりリスクを意識すると言われる。

 

投資の実務においては、過去のレンジなども踏まえ、終値ベースで25(日経平均VI)程度を一つの売買の基準として設定している投資家も多いようだ。

 

足元では、FRBによる先行きのテーパリング(量的緩和の縮小)懸念が残るなかでも、日経平均VI(VIX指数含む)は20を下回っており、投資家心理は落ち着いていると言えよう(6月15日時点)。こうした状況を代替戦略に伴う売買と結びつけると一つの投資戦略になりやすい。

 

また、ボラティリティに関して言えば、株の収益率が大きく変化する時期が集中する「ボラティリティ・クラスタリング(ボラティリティには正の自己相関が存在)という傾向が見られる。

 

わかりやすく言うと、株(VIX指数や日経VI等も同様)の振れ幅が大きくなると、しばらく値動きは大きくなる(逆に振れ幅が小さくなるとしばらくの間、値動きが小さくなる)傾向を指す。

 

このような市場の特性とリスクパリティに基づく投資行動を踏まえれば、足元の変動率低下が(多少上下しながらも)継続し、日次、週次、月次ベースの機械的なリスクパリティの買いが薄商いのなか、相場を下支えしている(またはする可能性がある)と見ることもできる。

 

今後は、ボラティリティ・クラスタリングなどのアカデミック(学術的)アプローチも活用し、たとえば、ポートフォリオ戦略として日中の日経VIが30を超える、または終値ベースの日経VIが25を超えるまでは、株式市場の調整場面での押し目買い戦略を継続する。

 

逆にこれらを超えてきた場合は、機敏にポジションの縮小および戻り売りスタンスへの変更またはショート戦略をポートフォリオに組み込み、リスク管理を徹底することも一つの代替戦略のアイデアになろう。

 

中村 貴司

東海東京調査センター

投資戦略部 シニアストラテジスト(オルタナティブ投資戦略担当)

 

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このレポートは、投資判断の参考となる情報の提供を目的としたもので、投資勧誘を目的としたものではありません。投資判断の最終決定は、お客様自身の判断でなさるようお願いいたします。このレポートは、信頼できると考えられる情報に基づいて作成されていますが、東海東京調査センターおよび東海東京証券は、その正確性及び完全性に関して責任を負うものではありません。なお、このレポートに記載された意見は、作成日における判断です。

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