個人の投資環境の変化がパターン分析の有効性を高める
また最近のAIを用いた学術研究では、CNN等を活用したパターン分析の有効性(その可能性も含む)を示す実証も広がってきており、オルタナティブ(代替)投資やAI・クオンツ(定量)運用の観点から同分析(特に時系列データがどのような経路を辿るのかを踏まえた戦略)に取り組む機関投資家やヘッジファンドも増えている。
とはいえ、視覚的でアート(芸術)として捉えられがちな同分析をメインに用いるファンド(運用資金量)はまだ国内では一部に限られよう。
一方、個人投資家によるパターン分析の活用の広がりは「自己実現性(市場参加者のなかで信じる投資家が多くいればいるほど、またその分析手法を活用すればするほど投資成果が高まる)」の観点から株価のシステマティックな変動(系統立った、規則的な動き)をもたらす可能性もある。
①ネット環境の整備や在宅・リモート下で個人投資家が広く株式市場に流入したこと、②AI・フィンテックツールの普及により、同分析を個人が容易に活用できるようになったこと(スクリーニング機能や自動売買等)、③先物、オプション、信用取引に加え、FX、CFD(差金決済取引)など個人がレバレッジを活用する機会が増え、売買面から市場に与える影響が(以前と比較し)格段に高まったこと等も自己実現性をもたらす要因となろう。
中長期の運用をメインに行う機関投資家がFRB(米連邦準備制度理事会)によるテーパリング(量的緩和の縮小)観測などから様子見姿勢を強めるなかでも、上値抵抗線を明確に上回ってきた場合(上抜けるものの短期間で再度下回った場合は除く)には、これらの戦略を用いた投資主体による需給要因がトレンド形成・反転の第一歩(初期)として機能してくる可能性も意識しておきたい。
中村 貴司
東海東京調査センター
投資戦略部 シニアストラテジスト(オルタナティブ投資戦略担当)
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