「パターン分析」とは、チャートの形状から株価の流れを読み取って売買タイミングを図る分析手法のことで、AIを活用して同分析に取り組む機関投資家やヘッジファンドが増えています。今回は、このパターン分析の有効性を高める要因を考えます。※本連載は、東海東京調査センターの中村貴司シニアストラテジスト(オルタナティブ投資戦略担当)への取材レポートです。
現在の日経平均株価を「パターン分析」すると…
今回は、代替戦略の一つとしてAI(人工知能)・フィンテックツールなどの普及によって活用が広がる「パターン分析(チャートの形状により、相場の底や天井、トレンドの転換・継続などを読み取る分析手法)」を取り上げたい。
パターン分析は、AIの画像・パターン認識技術が応用できる有望分野として注目されている。最近では、深層学習に基づくCNN(「畳み込みニューラルネットワーク」技術の応用:チャートを画像化しAIで分析する)が広がっている。
わかりやすく説明するため、伝統的なテクニカルのパターン分析を取り上げ、日本株(日経平均株価)に適用して説明したい。
日経平均株価のチャートを見ると、2021年2月16日のザラ場高値である30714.52円を起点に、それ以降の戻り高値を結んだ線(多少の誤差はあるものの、3月18日の30485.00円、4月6日の30208.89円、5月10日の29685.41円、6月7日の29241.20円を概ね結んだライン)が上値抵抗線になっている。
パターン分析では、上値抵抗線を突破した時点で買い転換し、上昇トレンドが発生しやすくなるとされる(逆に上抜けたあと、再度下回った場合は売り圧力が高まりやすくなる)。
こうした株価のパターンはCTAなどのトレンドフォロー戦略によるファンドやテクニカル戦略を活用した個人投資家の需給を通じて、日本株上昇(下落)をもたらす可能性もある。
ちなみに、CTAは商品投資顧問業者のことだ。相場の方向性に追随する機械的な戦略等を得意とし、ヘッジファンドの代表的な戦略の一つとして取り上げられることも多い。最近では先物の売買等を通じて日本株への影響度も強まってきており、どのようなポイントでCTA戦略を通じた「ファンドフロー」が生じやすいかを掴む上でパターン分析を押さえておくことも重要だろう。
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東海東京調査センター
投資戦略部 シニアストラテジスト(オルタナティブ投資戦略担当)
山一證券、メリルリンチ日本証券、損保ジャパンアセット(現SOMPOアセット)などでの富裕層・法人営業に加え、年金基金、投資信託のアナリストやファンドマネージャーとして新興市場やオルタナティブを含む幅広い市場・商品の担当責任者を経て、2016年に東海東京調査センター入社。
現職では短中期の戦術的資産配分(タクティカル・アセットアロケーション)やオルタナティブ投資(ヘッジファンド・テクニカルやコモディティ戦略含む)の視点を踏まえたグローバルな日本株の市場分析等を行う。他の代替資産・戦略としてJリート投資戦略、ESG投資戦略、行動ファイナンス投資戦略などもカバーしている。
英国国立ウェールズ大学経営大学院MBA。アライアント国際大学・カリフォルニア臨床心理大学院米国臨床心理学修士号(MA)。慶應義塾大学商学部卒。国際公認投資アナリスト(CIIA)、日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)、国際テクニカルアナリスト連盟検定テクニカルアナリスト(MFTA)、CFP、英国王立勅許鑑定士(MRICS)、不動産証券化協会認定マスター、中小企業診断士。
日経CNBCなどのTV・メディアに出演。日経新聞、QUICK、ロイター、ブルームバーグ、時事通信、東洋経済オンライン、幻冬舎ゴールドオンラインなどでも執筆、コメントを行う。ヘッジファンド・テクニカルのキャリアとして世界のテクニカルアナリスト協会を束ねる国際テクニカルアナリスト連盟(IFTA)の理事などを歴任。早稲田大学ビジネスファイナンスセンターや同志社大学、青山学院大学等で講師を務める。
著書には投信営業に行動ファイナンスアプローチなどを活用した『会話で学ぶ!プロフェッショナルを目指す人の「投信営業」の教科書』(2021年)がある。
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