税務調査官の大誤算…亡父の残したメモで息子が救われたワケ【弁護士が解説】

税務調査官の大誤算…亡父の残したメモで息子が救われたワケ【弁護士が解説】

税金の申告で、税務当局から指摘が入ったとき「おかしい!」「間違ってる!」と思っても反論できない。そのような現状を問題視した弁護士の北村豊氏が執筆した『争えば税務はもっとフェアになる』(中央経済社)より、一部を抜粋・編集して、財産管理メモが有効である理由を説明します。

税務調査官「いつ株式が贈与されたんだ?」

■税務当局が下した処分

 

「いつ株式が贈与されたんだ?」

 

息子は、お父さんから、資産管理会社の株式を贈与されたはずだ、と税務当局は考えました。ヒトは、ある年に他のヒトから贈与された財産に課される贈与税を、翌年の3月15日までに申告して納める必要があります。でも、申告期限から6年が経過すると、税務当局は贈与税を課すことができなくなります。

 

税務当局は、息子が、少なくとも平成21年分以降は、資産管理会社の株式の配当金を自分の所得に加えて所得税を申告していることに気づきました。

 

「遅くとも平成21年には、息子に贈与されていたといわざるを得ないか……」

 

税務調査を開始した時点で、既に申告期限から6年が過ぎてしまっていました。そこで目を付けたのが、最初に息子名義の預金口座に入金されたカネだったのです。これが、上場会社の株式になり、さらに、資産管理会社の株式に姿を変えていたからです[図表2]。

 

[図表2]
[図表2]本件でのカネの動き

 

「このカネは、もともとお父さんのものだったはずだ」

 

「お父さんは、このカネを、息子に対して贈与した証拠はない」

 

「そうすると、お父さんは、息子に対しこのカネの返還を請求する権利を有しているはずだ!」

 

税務当局は、そう考えました。そこで、このカネの返還を請求する権利を、相続税が課される財産に加えるべきであったとして、相続税を増やす処分をしました。

 

「そんなはずはない!」

 

息子は、お父さんから、このカネの原資を幼い頃より一貫して贈与されてきたので、お父さんは、カネの返還を請求する権利など有していないと考えていたのです。そこで、納税者は、審査請求に踏み切りました。

 

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争えば税務はもっとフェアになる

争えば税務はもっとフェアになる

北村 豊

中央経済社

「おかしいぞ!」「間違っとる!」 税務当局の指摘に納得がいかない納税者から、毎日、怒りのご相談が寄せられます。 その原因のほとんどは、事実の違いです。納税者に関する事実と、税務当局が把握した事実との違いが、怒り…

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