税務調査官が目を付けた「5000万円」の動き
財産管理メモを武器とした事例 国税不服審判所裁決平成30年8月22日
■納税者が取得した財産
今回の納税者は、お母さんと息子と娘です。お父さんは、平成26年12月に亡くなり、納税者3名が相続人となりました。
ヒトは、相続により取得した財産に課される相続税を、その相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内に申告して納める必要があります。そこで、納税者3名は、お父さんからの相続により取得した財産について、相続税の申告をしました。
問題となったのは、昭和62年6月から平成4年7月までの間に、息子名義の預金口座に入金された合計5000万円のカネの取扱いです。
このカネは、主に、上場株式を購入するために使われました。そして、購入した上場株式は、お父さんが設立した資産管理会社に対し、息子名義で出資され、資産管理会社から息子名義の株式が発行されました。
この預金口座の預金通帳と届出印は、平成2年から平成18年までの間は、お父さんの自宅の金庫に保管され、預金通帳の記帳はお父さんによって行われていました。
しかし、平成18年からは、息子が、この預金口座の預金通帳と届出印を、息子の自宅で保管するようになりました。資産管理会社は、平成13年以降、株主に対し配当金を支払っていました。
ヒトは、ある年に稼いだ所得に課される所得税を、翌年の3月15日までに申告して納める必要があります。そのため、息子は、少なくとも平成21年分以降は、資産管理会社からこの預金口座に振り込まれた配当金を自分の所得に加えて、所得税の申告をしていました。
息子は、自分名義の資産管理会社の株式は、自分のものだと思っていました。したがって、相続税が課されるお父さんの財産には含めていませんでした[図表1]。
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