税務調査官「怪しい!」父からの口座振込…カネの行方に絶句

税務調査官「怪しい!」父からの口座振込…カネの行方に絶句

税金の申告で、税務当局から指摘が入ったとき「おかしい!」「間違ってる!」と思っても反論できない。そのような現状を問題視した弁護士の北村豊氏が執筆した『争えば税務はもっとフェアになる』(中央経済社)より、一部を抜粋・編集して、税務調査のポイントを紹介します。

「口座振込2回」「贈与2回」…課税対象となるのは?

【国税不服審判所裁決令和元年6月27日】

 

今回の事件の納税者は、平成26年12月に亡くなったお父さんの子供です。納税者は、お父さんが亡くなるまでは、お父さんが営む病院で働いていました。納税者とお父さんは、それぞれ自分名義の預金口座を有しています。

 

納税者は、平成23年4月と平成24年10月に、お父さんからカネを受領しました。このカネは、お父さん名義の預金口座から引き出され、納税者名義の口座に振り込まれました。これとは別に、納税者は、平成23年12月と平成24年12月に、お父さんからカネを贈与されました。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

ヒトは、ある年に他のヒトから贈与された財産に課される贈与税を、翌年の3月15日までに申告して納める必要があります。贈与とは、ヒトが自分の財産をタダで他のヒトにあげるという意思を伝え、その他のヒトがそれをもらうという意思を伝えることで効力が生じます。

 

ただし、1年間に贈与された財産の合計が110万円以下であれば、贈与税はかかりません。納税者が平成23年12月に贈与されたカネは110万円以下でしたが、平成24年12月に贈与されたカネは110万円を超えていました。

 

そこで、納税者は、平成24年12月に贈与されたカネについて、贈与税の申告をしました。しかし、ここで話は終わりませんでした。

 

・税務当局が下した処分

 

「他にもらったカネはないか?」

 

税務当局は、平成23年と平成24年のカネの流れを調べました。そして、平成23年4月と平成24年10月にも、お父さん名義の預金口座からカネが引き出され、納税者名義の預金口座にカネが振り込まれているのを発見しました。

 

納税者とお父さんとの間には、カネの貸し借りに関する契約はありませんでした。そのため、このカネの受渡しは、お父さんから納税者への贈与だと税務当局は考えました[図表1]。

 

振り込まれたカネは「贈与」か?
[図表1]振り込まれたカネは「贈与」か?

 

お父さんは、カネをあげるという意思をはっきりとは伝えていなかったかもしれません。でも、それは、お父さんと納税者との間のいわずもがなの了解事項だったと考えたわけです。そこで、税務当局は、平成23年4月と平成24年10月に振り込まれたカネについても、新たに贈与税を課す処分をしました。

 

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次ページ「口座に振り込まれたカネは贈与ではない」根拠は?
争えば税務はもっとフェアになる

争えば税務はもっとフェアになる

北村 豊

中央経済社

「おかしいぞ!」「間違っとる!」 税務当局の指摘に納得がいかない納税者から、毎日、怒りのご相談が寄せられます。 その原因のほとんどは、事実の違いです。納税者に関する事実と、税務当局が把握した事実との違いが、怒り…

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