税務調査官が目を付けた「600万円」の動き
債務の支払を拒否する理由を武器とした事例 国税不服審判所裁決平成31年4月19日
■納税者が取得した財産
今回の納税者は、お母さんと子供3名です。お父さんは、平成25年8月に亡くなり、納税者4名が相続人となりました。納税者4名は、相続により、お父さんが所有していた土地と家屋を取得しました[図表1]。でも、お父さんから引き継いだものはそれだけではありませんでした。
お父さんは、平成25年2月に、請負会社との間で請負契約を締結し、所有する土地の上に請負代金1億5000万円でアパートを新築するよう発注していました。
この請負契約には、お父さんが契約を解除した場合、請負会社は、違約金600万円を請求できることが定められていました。請負会社が内金として受領した100万円を違約金に充当することも定められていました。
お父さんは、平成25年5月、請負会社に対して、請負契約を解除すると伝えました。また、違約金は、消費者を保護する法律が定める損害賠償額の上限を超えるとして、内金の100万円を違約金の支払に充当することで終了したいと伝えました。
請負会社は、相続の開始後、お父さんの相続人である納税者に対し、違約金600万円から内金を差し引いた後の500万円の支払を求めて、裁判所に訴えました。
納税者は、請負契約に際して請負会社側にお父さんに対する説明義務違反があり、お父さんは、請負会社に対し2000万円の損害賠償を請求する権利を有していたと主張しました。
そして、納税者は、その損害賠償を請求する権利を相続により取得したとして、逆に、請負会社に対し、損害賠償金2000万円の支払を求めて、地方裁判所に訴えました。地方裁判所は、請負会社の訴えを認め、納税者の訴えは斥けました。これに対し、納税者は、高等裁判所に控訴しました[図表2]。
ヒトは、相続により取得した財産に課される相続税を、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内に申告して納める必要があります。
もっとも、相続されるヒトの債務で、相続が始まるときに現に存在し、確実といえるものは、相続により取得した財産から減らすことができます。そこで、納税者は、お父さんが負っていた違約金600万円を支払う債務を、お父さんの相続により取得した財産から減らして、相続税の申告をしました。
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