(※写真はイメージです/PIXTA)

エンダウメント投資とは、米国の名門大学などが実践している「寄付金で財団や基金を設立し、寄付で集められた資産を元本にして運用する投資」のことで、継続して高い利回りをあげています。今回は、エンダウメント投資の手法である長期・分散投資のメリットを見ていきます。※本連載は、川原淳次氏の著書『大学・財団のための ミッション・ドリブン・インベストメント』(東洋経済新報社)より一部を抜粋・再編集したものです。

相関の小さい資産を組み合わせる分散投資の効果

ポートフォリオの分散効果とは、投資対象のリターンが同じようには動かないことによるリスク低減効果です。投資対象間の連動性を示す相関係数は+1〜−1の範囲となり、相関係数が1より小さければ小さいほど分散効果が期待できます。

 

では、基金にとっての分散効果とはどのようなものでしょうか?

 

まず、国内債券100%の運用を基本に考えます。1983年から2017年の過去平均リターンは約4%で、リスク(標準偏差)は約3%でした。一方、同期間の世界株式の平均リターンは約8%、リスクは約15%でした。2つの資産を組み合わせた、リスクとリターンの数値は、相関係数が1であれば、両者の線分上にあります。

 

しかし、相関係数が1より小さいと、直線ではなく上に凸の曲線となります。これが分散効果です。例えば、5%強の運用目標を達成しようとした場合には、直線分上のリスクは約7%ですが、凸曲線上のリスクは約5%となり、低いリスクでの運用可能性を示唆しています。この時の国内債券と世界株式の相関係数は0.08でした。

 

政策資産配分の策定においては、目標リターンをできるかぎり低いリスクで実現できるように、投資対象や投資比率を決めます。この凸曲線は、効率的フロンティアとか有効フロンティアと呼ばれ、ポートフォリオの効率性(=リターン÷リスク)を示すものとして一般的に用いられているものです(図表3)。

 

[図表3]

 

分散効果は債券と株式といった資産クラス間、さらには各資産クラス内の個別銘柄間の相関性によって生じます。大切なのは、個々の銘柄や資産のリターンの高低ではなく、ポートフォリオ全体で評価すべきであるということです。

 

そして、横軸にリスク、縦軸にリターンを取ったグラフはリスク・リターン特性を評価するためにしばしば用いられる図で、効率的であることを示すため、より左上方に位置するようなポートフォリオ(=効率的ポートフォリオ)を作成することが目標となっています。

 

川原 淳次

野村アセットマネジメント株式会社

マルチアセット&ソリューションズ担当CIO

 

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