いいことだけではない「風通しがいい社風」
■連続起業を阻む引継業務条項
また、属人性が強かったとしても、それが一定期間で解消できる見込みがあれば、「引継業務」をM&Aの条件とすることで解決が図られることもよくあります。引継業務はM&A成立後一定期間円滑な経営権の引継のために行われる業務で、売り手の社長を会社に拘束するものです。
単純な社内調整や業務の引き継ぎが目的なら3~6カ月程度、社長が担っている重要な役割を後継社長に承継するという場合では1~2年程度、買い手がPEファンド※の場合は、ファンドのイグジットまで(通常3~5年程度)の残留を求められることもあります。
※「プライベート・エクイティ・ファンド」の略称。機関投資家や個人投資家から集めた資金を未上場企業に投資し、IPOや売却によって利益を得ることを目的としたファンドのこと。
立場的には、そのまま代表取締役に留任する場合もあれば、代表権のない会長、あるいは、顧問や相談役などとして一定の関与を求められる場合もあります。
いずれにしても、長期間の引継業務がM&A契約に含まれれば、イグジットしたあとに会社から完全に手を離して別の事業をやりたいとか、しばらくのんびりと世界旅行でもしたいと思っていても、それができません。
連続起業※のためのイグジットを前提とするなら、契約時に長期間の引継業務条項は避けなければならないのですが、そのためにも「自分がいなくても回る会社」をつくらなければなりません。
※自己資金を投じて会社を起ち上げ、M&Aでその会社(株式、または事業)を売却というサイクルを繰り返すこと。
■「優秀さのワナ」に注意
とはいえ、現実的には、中小企業では、社長が最も仕事ができる優秀な人材ということがよくあります。社長の「顔」で営業して受注しているとか、製造現場で社長が最も優れた技術をもっているといった会社も多いでしょう。
自社のビジネスモデルを振り返ってみて、もしそのような社長依存型のモデルになっていたら意識してそれを変えていく必要があります。くどいようですが、S(自営業者)からB(ビジネスオーナー)になることを、意識的に心掛けなければなりません。
しかし、なまじ優秀な社長は、まさに優秀であるがゆえにそれが難しいという「優秀さのワナ」にはまってしまうことが多いので、十分に注意する必要があります。また、ビジネスモデルではなく、組織構造や管理体制が社長依存型になっている場合もあります。
例えばよくあるのが、社長が現場の社員の話を直接よく聞いているという組織です。これは「風通しがいい社風」といった具合に、いいことのように思われる場合もあるのですが、結局、トップが直接現場の問題を処理しているということに他なりません。すると、中間管理職の意味がなくなり、社長がいなくなったときに組織が回らなくなるのです。
そこで、社長はあえて現場のことは自分で処理せずに、適切な中間管理職を配置して、その人たちに権限と責任が適切に委譲された組織構造をつくることも必要です。そして、各部門が自律的に事業を回せるようになり、社長の仕事は会社が進むべき方向性を示すだけになる、というのが理想的です。
このように、M&Aイグジットを目指すのであれば、ビジネスモデル面でも、組織管理、組織構造面でも、社長の属人性を排した組織を目指さなければなりません。しかし、現在社長依存度が高い組織が、そのように変わっていくには一定の時間が必要です。
起業をする際に、最初からそのようなビジネスモデルや組織づくりを意識しておくことが、M&Aイグジットへの早道となります。
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