
M&AアドバイザリーサービスやM&A後の統合作業や組織再編、事業再生などのサービスを提供する株式会社すばる代表取締役の牧田彰俊氏が、「好きなことで、生きていく」という言葉が生んだ勘違いについて解説していきます。
起業で成功する人の特徴…好きなことで生きていかない
■好きなことで生きていかない
こう書くと、「そんなことは当たり前じゃないか」と思われるかもしれませんが、実はそうでもないのです。
会社員だった人が会社をやめて起業家に転身するようなケースで特に多いのですが、「会社員時代には好きなことができなかったので、起業家になって自分が好きなことでビジネスをする」という考えになってしまうことがあります。
数年前に「好きなことで、生きていく」というYouTubeのCMがありましたが、あのノリです。

しかし、その考え方だと、自営業者にはなれてもビジネスオーナーにはなれません。社長ではあっても経営者ではない、と言ってもいいでしょう。YouTuberとしてビジネスをしている限り、それで稼ぐことはできても、M&Aイグジット※はできないのです。
※自己資金と労力を投じて会社を起ち上げた起業家が、M&Aでその会社(株式、または事業)を売却すること。
ちなみに知り合いのYouTuberはCMのキャッチフレーズである「好きなことで、生きていく」は、「お客様(視聴者)が好きなことで、生きていく」であると話していました。
グルメ情報に特化したメディアサイト「めしレポ」やサイト売買プラットフォーム「UREBA」を立ち上げ、事業譲渡した海山龍明氏も、最初は自分が好きなことで起業しようと旅行アプリを開発して大失敗した経験がありますが、まさにこの例です。
ではどうすればいいかといえば、抽象的な言い方になりますが、世の中の動きに常にアンテナを張り巡らせて「流行りはじめているもの」を見つけてぱっと飛びつくのが簡単でしょう。
例えば、少し前なら、タピオカ屋が流行り始めたときに、ビジネスセンスのある人は、すぐに参入しています。そして、ブームが絶頂のときにM&Aイグジットしてしまうのです。ブームが絶頂に近いときであれば、事業の規模拡大を狙う同業者にも、多角化として新規参入したい異業種の会社にも簡単に売れます。
そして、1回か2回M&Aイグジットを成功させて、資金に余裕ができてから、自分が本当に好きなことをビジネスにしても、決して遅くはないでしょう。