「マンションを売る必要がある」とウソを…
Aさんが自宅(1億円)とマンション(5000万円)を残して亡くなりました。Aさんの相続人は、お子さんであるXさんとY子さんだけです。
実は、Aさんは遺言書を書いていました。自宅はXさんに、マンションはY子さんに相続させるという内容でした。
Xさんは、Aさんから遺言書を預かっていましたが、そのことは説明せず、病気で入院していたY子さんに対し、「取り敢えず、相続税の支払いのためにマンションを売る必要がある。Y子さんと共有にすると売却するのが大変なので、自分名義(X名義)にさせてほしい。遺産の精算は、後でまとめてする」と伝えました。
この相続発生から数年後、Y子さんは亡くなってしまいました。Y子さんにはQさんという子どもがいて、Y子さんの財産を相続しました。
さらに数年が経過して、Xさんも亡くなりました。XさんにはPさんという子どもがいて、Xさんの財産を相続しました。
「マンション売却は合意、自宅の相続は遺言通りに」
Qさんは、Xさんの法事でPさんと出会ったことから、「Aさんの自宅とマンションがどうなったか知っているか」と質問しました。遺産分割がされていなければ遺産分割協議をしようと考えたのです。
するとPさんは、「マンションはXさんとY子さんで話し合って売却したと聞いている。自宅は、遺言でXが相続するとされており、Xは亡くなって私が相続したので、私名義にする予定だ」と答えたのです。
遺言を見せてもらうと、遺言には、「自宅はXさんに、マンションはY子さんに相続させる」と書かれていました。
調べたところ、マンションはXさん名義にされた後に売却されていました。
Qさんは「遺言があったことは聞いていない。もし遺言があったのなら、マンションはY子のもので、売却代金はY子のものではないか? 本来、相続は2分の1ずつなのに、自宅もマンションも、Xのものになるなんておかしい」といいました。
これに対し、Pさんは、「マンションの件はY子さんも承諾してX名義にしたことだから、こちらには関係がない。自宅は遺言があるのだからXの相続人である私が相続する」といったのです。
この場合どうなるでしょうか。次の①~⑤から選んでください。
①Pさんのいうとおり、自宅もマンションもXさん(又は相続人であるPさん)のもので、Y子さん(相続人であるQさん)は何も請求できない。
②Y子さん(相続人であるQさん)は、遺留分である遺産の4分の1(3750万円)を請求できる。
③Y子さん(相続人であるQさん)は、マンションの代金5000万円を請求できる。
④Y子さん(相続人であるQさん)は、法定相続分である遺産の2分の1(7500万円)を請求できる。
⑤Y子さん(相続人であるQさん)は、自宅については法定相続分2分の1(5000万円)を請求でき、マンションについては全額(5000万円)請求できるので、合計1億円を請求できる。
民法では、「これをしたら相続ができなくなる」という「相続欠格事由」が定められています。相続欠格事由には、ドラマのように被相続人を殺して刑に処せられた場合はもちろん
遺言書の偽造は、自分に有利な遺言書を作成するのがほとんどなので、偽造した遺言書が出てきます。これに対し、遺言書の破棄、隠匿は、自分に不利な遺言書を破ったり、隠したりしてしまうことなので、通常は遺言書が出てきません。
したがって、通常は、遺言書が破棄されたり、隠されたりしたことを他の相続人はわかりませんし、仮にわかったとしても「遺言があったことを証明」は難しいので、遺言書の破棄、隠匿を裁判で争うケースはかなり珍しいのです。
ちなみに筆者も、弁護士生活27年の中で1度しか経験がなく、遺言書の隠匿、破棄について経験のある弁護士はそうそういないと思います。本記事で取り上げた事例も、筆者が扱ったケースを、個人が特定されないよう改変したものです。
注目のセミナー情報
【減価償却】11月20日(水)開催
<今年の節税対策にも!>
経営者なら知っておきたい
今が旬の「暗号資産のマイニング」活用術
【国内不動産】11月20日(水)開催
高所得ビジネスマンのための「本気の節税スキーム」
百戦錬磨のプロが教える
実情に合わせたフレキシブルな節税術