「ヘッジファンド」とは、株式市場が上昇局面のときでも下落局面のときでも様々な手法を駆使してプラスの収益を目指すファンドのことです。今回は、ヘッジファンドの運用資産の増やし方と守り方を見ていきます。※本連載は、渋沢栄一の5代目子孫、コモンズ投信株式会社会長を務める渋澤健氏の著書『渋沢栄一 愛と勇気と資本主義』(日経ビジネス人文庫)より一部を抜粋・再編集したものです。

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ヘッジファンドの「攻め」とは、レバレッジの活用

さて、「守り」だけでは、ヘッジファンドの高収益につながらないということは、前項の説明でおわかりいただいたことと思う。

 

ヘッジファンドの収益源はレバレッジ(借入)だ。ヘッジファンドと呼ばれているファンドの多くは、正確な呼び方とはいえない。実は「レバレッジファンド」と呼ぶべきだと思う。レバレッジを辞書で引くと「テコの作用」と訳してある。

 

要するに大きな石を動かすときに、素手ではびくともしないが、長い棒をテコとして使えば力が倍増して動くというイメージだ。具体的に、運用のレバレッジとはこのように考える。

 

AさんはKK社の株が上昇すると確信している。Aさんの手元には100万円がある。KK株を100万円分購入してKKの株価が2倍になれば、Aさんは100万円儲かる。100%という素晴らしい運用利回りが実現することになる。

 

一方、BさんもKK株が上がるということを確信している。Cさんから100万円を借りて自分の100万円に足して、200万円をKK株に投入する。

 

Bさんの予想は的中してKK株は倍になり、儲けは200万円である。Cさんに100万円を返すと、Bさんの手元には当初の資金の100万円と儲けの200万円、つまり、200%という超高利回りである。

 

というわけで、BさんはKK株で勝負に出た。上がるという確信があったから「攻めた」。攻めるために軍資金を増やそうと、資金を借り入れた。これがレバレッジである。

 

しかし、当然であるが、この手法が実るのは「攻め」が成功した場合に限る。もし、Bさんの予想に反して、KK株が5割下がってしまった場合、200万円の元本が100万円になる。Cさんに100万円を返したら、Bさんの手元資金はゼロになる。ジ・エンドだ。

 

一方、Aさんのようにレバレッジをかけていなければ、手元にはまだ50万円が残った。それを元手にまだ勝負ができたのだ。

 

借り入れをしながら投機する「カネがカネを生む」ことは、道徳的にみて「卑しい仕事」だ、と思う方々が少なくないであろう。ところが、こうした「卑しい仕事」は、ヘッジファンドの特権ではない。

 

1998年の日本金融危機の直前の話であるが、ムーア・キャピタルの同僚のデビッド・ワディルが訪日中のミーティングを終えた後に言った言葉に、開いた口が塞がらなかった。

 

「日本の銀行は、ポートフォリオの保有株だけのレバレッジが、自己資本に対してヘッジなしで2倍以上なんて、アンビリーバブル!ヘッジファンドよりリスクを取っている!」

 

当時は持ち合い株の解消も進んでおらず、公的資金が日本の銀行に注入される前であり、彼らのバランスシートのレバレッジは高水準であった。

 

1998年のLTCMなどヘッジファンドが破綻するときのパターンはいつも同じだ。想定外の有事というカーブに差し掛かったときに、過剰なレバレッジという重荷でハンドルが利かなくなるのだ。

 

また、2008年のリーマンショックの時は、ひとつの金融機関の問題だけではなく、ほとんどの金融機関が収益競争のために自己バランスシートに過剰なレバレッジをかけていた。1社の破綻が連鎖倒産を呼ぶ恐れがあった。

 

そう考えると、どの国のどの会社の倒産パターンも基本的に同じだ。過剰な借り入れ状態に陥り、想定外の事態が発生して、首が回らなくなる。

 

ただ、レバレッジは否定すべきことではない。レバレッジを有効に活用することは収益向上につながるからだ。昨今、日本企業でもROE(株主資本利益率)を向上させようという意識が高まっているが、これは現金をバランスシートにため込むのではなく、資本と借り入れの良いバランスを目指すことなのである。

 

資本主義とは基本的に自己資金に他人から集めたお金を加えて活用することであり、「攻め」のレバレッジとは切っても切れない関係にある。

 

渋澤 健

コモンズ投信株式会社会長

 

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渋沢栄一 愛と勇気と資本主義

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渋澤 健

日本経済新聞出版

もし、渋沢栄一が現代に生きていたら、日本の持続的成長を促すファンドをつくっていただろう――。 大手ヘッジファンドを経てコモンズ投信を創業した渋沢家5代目が、自身のビジネス経験と渋沢家家訓を重ね合わせ、目指すべ…

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