「ヘッジファンド」とは、株式市場が上昇局面のときでも下落局面のときでも様々な手法を駆使してプラスの収益を目指すファンドのことです。今回は、ヘッジファンドの運用資産の増やし方と守り方を見ていきます。※本連載は、渋沢栄一の5代目子孫、コモンズ投信株式会社会長を務める渋澤健氏の著書『渋沢栄一 愛と勇気と資本主義』(日経ビジネス人文庫)より一部を抜粋・再編集したものです。

ヘッジファンドは「攻め」と「守り」のバランスを重視

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

そもそも、「ヘッジファンド」とは一体、なにものか? 実は、ヘッジファンドには多様な戦略があるが、共通点は資本価値を守る「ヘッジ」と資本にテコを入れる「レバレッジ」で、どのような市場環境であろうと絶対的な収益を挙げることを目標としている。

 

この目標を現実のものとするのに不可欠なのが、リスクマネジメントだ。

 

そのために、ヘッジファンドは、まず厳正な調査や分析から始まる。調査や分析は投資判断に欠かせない基礎であり、これこそが自分たちの付加価値と訴えるファンド・マネジャーも多い。

 

ただ、運用の実践では、「攻める」と「守る」のタイミングをいかに計るかが、ヘッジファンドのリスクマネジメントという芸術的なセンスだ。

 

場合によっては、自分が間違ったと思ったときには躊躇せずにしがらみを捨て、「守り」に入る。そして、儲けるチャンスと思えば、一気に機動的に「攻める」。ヘッジファンドの世界はダイナミックだ。

 

重要なポイントが、リスクという言葉は「危険」という意味ではなく、「不確実性」であるということだ。将来が不確実であるからこそ、収益の機会に巡り合うことができる。そういう意味では、リスクを避けていては、機会に出会えなくなってしまう。

 

リスクマネジメントとは、「リスク管理」ではない。文字通り「リスク」をマネージし、リスクのプラス面である「機会」を的確にとらえ、マイナス面の「危機」を避け、最終的に利益をあげる行為のことに他ならない。これが、筆者がヘッジファンドから学んだリスクマネジメントの本質である。

 

無論、「リスク管理」という手順も重要であり、ヘッジファンドは様々なリスク要素を定量モデルでモニタリングしている。ただ、1998年のLTCM(ロング・ターム・キャピタル・マネジメント)の破綻が示したように、ノーベル受賞者級の研究や分析に基づいたリスク管理モデルでも、市場が壊れた有事のときには無力になった。

 

なぜなら、長期的には理論的な合理性が優位になるのかもしれないが、高レバレッジ(借入)を用いるヘッジファンドは、長期的な逆風に耐えられなくなる体質だからだ。

 

ヘッジファンドから学んだリスクマネジメントの本質、そして、ヘッジファンドのレバレッジ体制による限界も知ることが、その後の自分の長期投資への世界を導くことになったのだ。

 

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渋沢栄一 愛と勇気と資本主義

渋沢栄一 愛と勇気と資本主義

渋澤 健

日本経済新聞出版

もし、渋沢栄一が現代に生きていたら、日本の持続的成長を促すファンドをつくっていただろう――。 大手ヘッジファンドを経てコモンズ投信を創業した渋沢家5代目が、自身のビジネス経験と渋沢家家訓を重ね合わせ、目指すべ…

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