500円の幕の内弁当を「落として作り直したら」損失額はいくら?…3つの問題で見る「機会損失」の不思議な仕組み

500円の幕の内弁当を「落として作り直したら」損失額はいくら?…3つの問題で見る「機会損失」の不思議な仕組み

K&P税理士法人の香川晋平氏の書籍『東大卒でも赤字社員 中卒でも黒字社員―会社が捨てるのは、利益を出せない人』(株式会社経済界)より、「機会損失」と「埋没原価」について、複数の問題を例に解説します。

ビジネスで重要な「機会損失」「埋没原価」の考え方

・会社に与えた損失額はいくら?

 

あなたがミスをしてしまったときに、会社に与えた損失額がいくらになるのかを考えてみましょう。ここでの重要なポイントは、2つあります。1つは、本当は得られるはずであった利益を得そこなったという「機会損失」の考え方です。

 

もう1つは、「埋没原価(まいぼつげんか)」と呼ばれるものです。これは、すでに支払ってしまったので今さらどうしようもないコストのことで、将来の問題を考えるときに無視しなければならないものです。

 

この機会損失と埋没原価を意識して、次の3つの問題を一緒に考えてみましょう。

問題1:幕の内弁当を落としてしまった!

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【問題1】

あなたは、オフィス街でお弁当の移動販売をするA社で働いています。A社の幕の内弁当は大人気で、毎日限定50個を販売しているのですが、昼過ぎには完売してしまいます。

 

ある日、あなたがオフィス街で販売の準備をしているときに、うっかり幕の内弁当を1個落としてしまい、とてもお客様には販売できないので、捨ててしまいました。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

さて、あなたが幕の内弁当を1個落としたことによって、会社に与えた損失額はいくらでしょうか?

 

幕の内弁当1個の売上と原価の構成は、下記のとおりです。

 

売上 500円

売上原価 200円

売上総利益 300円

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A社の幕の内弁当は昼過ぎには完売しています。ですから、落とさなかった場合には、500円の売上が確実に上がります。しかし、落とした場合には売上は0円です。

 

売上原価(コスト)への影響ですが、A社は移動販売をしていますので、追加の製造はできません。したがって、落とした場合も落とさなかった場合も、すでに発生している200円の売上原価となります。

 

【問題1】の答え

落とさない場合……500円(売上)- 200円(コスト)=300円(利益)

落とした場合……0円(売上)- 200円(コスト)=▲200円(利益)

差額……300円(落とさない場合)- ▲200円(落とした場合)=500円

 

よってこのケースで会社に与えた損失は500円になります。

問題2:幕の内弁当、作り直したら?

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【問題2】

「あなたは、駅前でお弁当屋を経営するB社で働いています。B社の人気商品は揚げたての天ぷらなど、おかずが豊富な幕の内弁当です。

 

ある日、お客さんが幕の内弁当を注文しましたが、あなたはうっかり出来上がった幕の内弁当を1個落としてしまいました。このお客さんは、常連の方で、特に怒ることもなく待ってくれたので、すぐに幕の内弁当を作り直しました。

 

さて、あなたが幕の内弁当1個を落としたことによって、会社に与えた損失額はいくらでしょうか?

 

幕の内弁当1個の売上と原価の構成は、下記のとおりです。

 

売上 500円

売上原価 200円

売上総利益 300円

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先程のケースと同じ、売上と原価の構成です。まず、売上への影響ですが、B社のケースでは、お客さんは待ってくれました。ということは、落とした場合も、落とさなかった場合も、売上は変わらず500円ということになります。

 

売上原価への影響ですが、B社のケースでは作り直しているので、落とした場合には、その分追加の売上原価が発生します。

 

【問題2】の答え

落とさない場合……500円(売上)- 200円(コスト)=300円(利益)

落とした場合……500円(売上)- 400円(コスト)=100円(利益)

差額……300円(落とさない場合)- 100円(落とした場合)=200円

 

よってこのケースで会社に与えた損失は200円になります。

問題3:幕の内弁当、多めに仕入れていたら?

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【問題3】

あなたは、コンビニを多店舗展開するC社で働いています。お弁当コーナーの人気商品は幕の内弁当。

 

特に、帰宅の遅いサラリーマンに人気で、以前に早い時間帯に売り切れてしまった際に、「幕の内弁当は、もうないの?」という声が多かったほどでした。それ以来、売り切れが生じないように、いつも多めに仕入れています。

 

ある日、あなたがお弁当の陳列をしているときに、うっかり幕の内弁当を1個落としてしまいました。落とした後に踏んでしまい、とてもお客様には販売できないので、捨ててしまいました。

 

さて、あなたが幕の内弁当1個を落としたことによって、会社に与えた損失額はいくらでしょうか?

 

幕の内弁当1個の売上と原価の構成は、下記のとおりです。

 

売上 500円

売上原価 200円

売上総利益 300円

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まず、売上への影響ですが、C社では売り切れが生じないように、いつも多めに仕入れているということでした。

 

売り逃しという機会損失を避けるため、ある程度の廃棄を前提にしているわけです。つまり、落とした1個は余ることが前提でしたので、落とした場合も、落とさなかった場合も、幕の内弁当1個分の売上はゼロとなります。

 

次に、売上原価(コスト)への影響ですが、C社は落としたからといって、その日に追加で仕入れることはありません。したがって、落とした場合も、落とさなかった場合も、すでに発生している200円の売上原価となります。

 

【問題3】の答え

落とさない場合……0円(売上)- 200円(コスト)=▲200円(利益)

落とした場合……0円(売上)- 200円(コスト)=▲200円(利益)

差額……▲200円(落とさない場合)- ▲200円(落とした場合)=0円

 

よってこのケースで会社に与えた損失は0円になります。

 

■3問の共通点は

 

この3つの問題は、すべて「1個落としたことで、会社に与えた損失額は?」ということです。つまり、「落とさなかった場合」と「落とした場合」を比較すればよいのです。

 

もう1つのポイントは、会社に与えた損失額(利益のマイナス)を計算するので、「売上への影響」と「売上原価(コスト)への影響」を考えるということです。

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東大卒でも赤字社員 中卒でも黒字社員―会社が捨てるのは、利益を出せない人

東大卒でも赤字社員 中卒でも黒字社員―会社が捨てるのは、利益を出せない人

香川 晋平

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