給与と仕事能力の相関関係…20代はみんな赤字社員?
テレビでお馴染みの池上彰氏は、著書『会社のことよくわからないまま社会人になった人へ』(海竜社)で、会社からもらう給与について、次のように説明しています。
「二十代新入社員は能力がほとんどゼロでも、初任給は二十万円を超えます。最初は、働き以上のたくさんの給料をもらうのです。やがて仕事を覚え、ベテランになるにつれて、能力と、その対価としての給料が一致するときがきます。三十代前半でしょうかね」
20代の方であれば、現段階で赤字社員というのは、ある程度仕方がありません。池上氏の解説にもあるとおり、大半の20代は能力が給与に見合わない、会社にとっての赤字社員なのです。会社も長期的なスタンスで採用し、将来のための投資と考えています。
しかし、ここで赤字社員が認識しておかなければならないのは、会社から「今までずっと給与をもらい過ぎていた」という事実です。会社への利益貢献という観点からは、「給与を前払いでもらっていた」ということです。
ですから早く黒字社員になって、会社にもらい過ぎていた分まで返さなければならないのです。そして、少しでも周囲の役に立てることがあれば、進んでやらないといけないのです。
たとえば、仕事を頼んだときに、「はい、わかりました!」と返事を速く、明るく言えるAさん。そこで、「はあ」とため息をついてから、低いテンションで「わかりました」と言うBさん。
返事の仕方ひとつの違いだけでも、会社への利益貢献額は雲泥の差となります。上司は何か手伝って欲しいときに、Aさんになら悩まず瞬時に仕事を頼めます。
一方のBさんには、上司は頼みたくありません。しかし、ほかに頼める人がいないとき、仕方なく頼みます。上司がBさんに頼む前後数分間、明らかに上司の仕事の生産性が落ちるのです。
上司の給与が50万円、月に20日、1日8時間働くとすると、
50万円÷160時間(20日×8時間)=3125円
これが1時間当たりの給与となります。そして、
3125円÷60分=約52円
これが1分当たりの給与となります。仮に、Bさんに何かを頼む前後の10分間に生産性が落ちると、Bさんのその返事ひとつが520円の損失を生むのです。これが毎日続いたら、一体、会社はどれだけの損失になるのでしょうか?
一方のAさんは、こういう損失を発生させずに会社に利益貢献していきます。雑用でも何でも、明るい返事で、進んでやる人は、多くの人から仕事を頼まれるようになるので、今は赤字社員であっても時間が経てば「人財」※になっていきます。
※会社の財産。自ら進んで何事にも取り組み、会社の宝となる人
したがって、今は赤字社員だったという人は、まずは仕事を頼んでもらえるように心がけることが大切なのです。もちろん20代であっても、すでに立派な黒字社員で、会社にとって「人財」と期待されている方もいるでしょう。
そんな方の中には、「自分はもっと給与をもらってもいいのでは?」と不満に感じている黒字社員もいるかも知れません。しかし、そのような方は、その差額分は会社に貯金していると解釈しましょう。会社に「信頼」という「残高」を預けていると。
この「信頼残高」が積み上がると、後に大きなリターンが得られます。自分のやりたいプロジェクトの提案をしやすくなったり、仕事がやりやすくなったり……。
「仕事の報酬は仕事である」という有名な言葉がありますが、黒字社員は、社内で徐々に大きな仕事を任されるようになり、そこでまた利益貢献していくことによって、必然的に給与にも跳ね返ってきます。そのときまで貯金をしているつもりで、さらなる会社への利益貢献を目指しましょう。
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